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好きと好きのあいだ5
「なんだよ、急に」
「ん? いつも思ってることだよ。だって韓国に来てまだ約4ヶ月で、もう韓国語でオーダー受けられるぐらいの韓国語力つけたなんてほんとにすごいことだよ。頭がいいんだね」
「それ、嫌味か? 延世出てるやつに言われたくない。延世なんてすごいだろ」
「確かにSKYではあるけど」
「こっちに来て、そのSKYっていうの知った。まさか馬鹿なことばかりのイジュンがその卒業生とは思わなかったけどな」
「ひどーい」
「ほら、そうやってふざけてる」
良かった。少し元気になっただろうか。先ほどの表情より今の表情の方が明るくなってる。俺が馬鹿なことを言うことで明日海が元気になるのなら、それでいい。俺は明日海の笑顔を見たいだけだ。それに明日海が言っていた。お母さんと笑うことを約束したと。だから俺は明日海を笑顔にしなきゃいけない。韓国に呼び寄せたのは俺だから。それに、それがなくとも俺は明日海を笑顔にしたい。そのために俺が馬鹿な言うのならいくらでも言う。
「ねぇ。夏休み、もし一時帰国しないのなら、うちにおいでよ。みんな明日海に会いたがってる。とくに|ハルモニ《ばあちゃん》」
「そうだな。俺もハルモニに会いたい」
「でも、もし一時帰国するのなら言ってね」
「ああ。でも、多分帰らないかな」
「そしたらうちに来て、それから済州島にでも行こうよ」
「済州島は綺麗なんだろ」
「っていうね。実は俺も行ったことはないんだ。で、日本へは正月に行こうよ。俺も行きたい。日本のクレープ食べたい」
「韓国の正月は旧正月だろ? 日本はなにもないときだから空いてていいと思う」
「じゃ、決定。ハルモニ喜ぶよ」
ハルモニが明日海に会いたがっているのはほんと。というか気にかけてる。韓国語もわからないうちに1人で韓国へ来てって言って。だから明日海を連れて行ったら喜ぶし、安心するだろう。でも、暗い顔をした明日海を連れて行ったらハルモニは心配する。いや、ハルモニだけじゃなくて、|アッパ《父さん》も|オンマ《母さん》も。
「でさ、ソウルの他のクレープ屋回ってみよう。どんな感じなのかさ。今、東大門で人気のクレープ屋があるらしいし」
「東大門に? ちょっと気になるな」
「でしょ。だから行ってみようよ」
「うん。行ってみよう」
「他のクレープ屋との違いを出したいよね。特にここは日式クレープって言ってるから」
日式クレープって言ってるから、他のクレープ屋と同じなのはおかしい。だからほんとは夏休みに日本へ行くのがいいけど、日本のクレープは明日海が知ってるから、そこを頼る。だからまずはソウルで話題になってるクレープ屋に行って、どんなメニューなのかを見てみたい。そして味も。
「まぁ、あずきや抹茶を使ったものは日式になると思うけどね」
そう。だから春はそのメニューが人気になった。でも、これからは春のメニューはないから、少し考えなきゃいけないかもしれない。
「白玉は?」
「白玉か。それもいいかもね。そんなこともさ、夏休みに決めようよ」
お店のことを話すと明日海は真剣になるし、元気もでるみたいだ。日本人は真面目でよく働くというけど、明日海も例に漏れないみたいだ。それだけhanairoのことを考えてくれているっていうことだ。でも、お店のことで元気になるのはいいけど、日常のなんでもないことでも元気になって欲しいし、なにより俺といることで元気になって欲しい。もっとも今日はソヨンが来たから元気がなくなったみたいだけど。俺の気持ちはソヨンもわかっているんじゃないかと思うけど、だからってソヨンの気持ちを変えることはできない。だから明日海にライバル心を持ってしまうのも仕方がないのかもしれない。だけど、なんとかしたいけど、どうしたらいいのかわからない。
そんなことを考えていると時計の針は21時をさした。
「終わった。明日海、お疲れ様」
「イジュンもお疲れ」
時間になったので窓を閉め、カーテンも閉める。そして閉店準備だ。俺はレジ閉めをやり、明日海は鉄板やその周りの掃除。そしてその後は2人でイートインスペースの掃除をする。それがいつの間にか決まったルーティーンだ。
レジを閉め終わった俺がイートインスペースに行くと、少し遅れて明日海が来る。
「この写真さ。そろそろどこか夏を感じさせるのに変えないか?」
掃除をしているときに、鎮海の桜の写真が入れられているものを指さして明日海が言う。俺も気になっていることだった。
「春の後だったら夏か。それこそ済州島なんかいいんじゃない?」
「あぁ、韓国のハワイか」
「うん。海だからいいんじゃないかな。写真を変えるとして、壁はどう? 写真と同じ桜だし」
「なんか他のに変えるか」
さすがに真夏に桜はちょっと似合わない気がする。
「ひまわりとか夏を感じさせるのがいいかもね。東大門に行ってもいいし、ネットで買ってもいいね」
「そうだな」
「じゃあ明日にでも行ってみる?」
「イジュンは大丈夫なのか?」
「ん? 時間はあるし、明日海に会えるし、俺はいいよ」
「そっか。じゃあ行くか」
そう言っている明日海はいつもの明日海に戻っていた。それを見て、俺はホッとした。
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