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桜の散る午後1

「え? メディアが入る?」  hanairoに地元新聞とネットニュース、そして日本の韓国旅行ポータルサイトが取材に入ると聞いて俺はびっくりした。いや、日本の旅行ポータルサイトの取材は日本語なので俺はメールを読んで知っていたけれど、地元新聞とネットニュースは知らなかったから、イジュンに聞いてびっくりした。まさか1度に3つのメディアの取材を受けるとは思わなかった。日本の旅行ポータルサイトに関しては取り上げられたらいいなと思っていたけれど、韓国の地元新聞とネットニュースはまさかそんなことがあるとは思わずに、ただただびっくりした。  そうしてまず始めに韓国のネットニュースが取材に入った。韓国語だから窓口は当然イジュンになる。まずは店頭の写真撮影から、イートインスペースの写真撮影と続き、俺とイジュンの写真も撮るという。昨日イジュンに、もしかしたら俺たちの写真を撮るかもしれないからと言われていたので、それなりの格好をしてきたけど、実際に写真を撮られるとなると気持ちは泡立ってしまう。写真を撮られるのは好きではない。でも、まさかだからと言ってイジュンだけと言うわけにもいかないから、撮られる覚悟を決める。俺にとって写真とはそれぐらいしないとダメなものだ。俺が写真を撮られることを嫌っているのはイジュンが良く知っている。だから、写真を撮られるときは、イジュンが俺の手をさり気なく触れてくれた。ほんとは手を握って貰っていたかったけど、そういうわけにもいかないから、それでなんとか無理矢理笑顔を作る。きっと強張った顔してるんだろうなと思いながらカメラのレンズを見ていた。  写真を撮ったあとはインタビューが待ち受けていた。とはいえ、韓国語なのでイジュンがほとんど答えてくれていた。でも、きっとそこそこは言っていることはわかるだろうと思っていた。だけど、考えが浅かったとインタビューが始まって思い知った。最近はお店のオーダーもソヨンさんの言葉もほとんどわかるようになっていたので、韓国語に対して少し自信を持っていた。だけど実際にインタビュアーから飛び出してくる韓国語は、ほんの少ししかわからなくて、話の文脈から推測することもできなかった。それならイジュンの話す韓国語を……と思ったけれど、俺と話しているときと違ってスピードが早いからか、それとも声が低いトーンだからか、こちらもよくわからなかった。声のトーンは、聞き取るのにかなり重要になる。他の人はどうかわからないけれど、俺は気持ち高めの方が聞き取りやすい。だから声が低い男の人の韓国語は聞き取り辛い。もう、完全にお手上げ状態になり、俺はイジュンの隣で置物のように座っていた。途中メニューについて訊かれたときはイジュンが英語に通訳してくれたから、俺も英語で説明をした。  インタビューが始まって数分。イジュンが席を立ってhanairoの文字と桜の花模様の入った包装紙を持ってくる。包装紙を持ってきてどうしたんだろうと思っていたら、このピンク色の包装紙も可愛くて人気になっているとイジュンが通訳してくれて驚いた。そして、どうしてロゴを桜にしたのかを訊かれているんだとわかった。 「お店の看板メニューが春を連想させるメニューなので、それから連想して桜にしました。この桜のロゴは日本の小学校で使われる桜のスタンプにインスピレーションを受けたものです。そして、なぜ春なのかというと、僕が日本の大学を卒業して韓国で一緒に起業したのが春。スタートの春を意識しました」  緊張していつものように英語も滑らかにはいかなかったけれど、訊かれたことはきちんと答えていたと思う。 「明日海は韓国へ来てどうでしたか?って」  お店のことのインタビューが終わったからか俺に質問が来てしまい、イジュンが通訳をしてくれる。 「韓国語も含めてまだわからないことだらけだけど、少しずつ理解していくようにしています。韓国語も今、勉強中です」  もう英語でさえ怪しくなってきたので一言で終わらせるしかない。そしてありきたりな返事しかしていないけれど、ほんとにそれだけだから。俺へのインタビューなんていらないから、イジュンにインタビューして欲しい。ついそんなことを思ってしまった。それでも、俺へのインタビューは続き、俺は息も絶え絶えに答えていた。 「韓国へ来て数ヶ月経つけど、来てどうですか?って」  は? 韓国へ来てどうかって? そんなのわからない。考えたことない。どう答えたらいいのかわからなくてイジュンに目で助けを求めたけれど、気づいてはくれなかったようだ。なに? どう答えたらいいんだ? とりあえず就職の面接とかのお手本の答えでいいかな? 「まだわからないことがいっぱいあるけれど、周りの人に恵まれているので楽しく生活しています」  その一言で俺へのインタビューが終わり、メディアも帰っていった。その瞬間俺は大きなため息をつき、テーブルに突っ伏した。

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