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桜の散る午後4

 21時30分。hanairoの近くのカフェでオッパを待っている。お店がクローズになってから掃除をして終わるのがこれくらいの時間と言われたので待っている。ほんとは日曜日が良かったんだけど、オッパが用事があるというからなにかと思ったら「明日海に韓国語を教えるから」と言う。毎日お店で会っているのに休みの日にまで会うのかと思ったことは内緒。日曜日がダメならということで月曜日の今日約束をした。  オッパと会えるとなると、いつもなら嬉しいのに、今日は嬉しくない。だって、今日は私が失恋する日だから。失恋するのがわかっていて呼び出すのも変かもしれないけど、自分の中で消滅するのを待つよりも、はっきりきっぱりと切り捨てられた方が前に進めるのが早い気がして、今日は失恋しに来た。でも明日は1限目から授業があるから、赤い目で行きたくないな。失恋するのがわかっていても泣くだろうと思っている。きっとしばらくは泣くことになるかもしれない。1日で済むとは思わない。だって子供の頃からオッパのことが好きだから。この、好きを過去形にしなきゃいけない。それが今日なんだ。  アイスラテを買って、2階の奥の席に座ってオッパにそのことを伝えるためにメッセージを送る。そろそろ来る頃だろうな。そう思って窓の外を見る。オッパがお店をオープンさせてからここには随分通った。私の通う大学からは距離があるから学校の友達と寄り道をするには遠い。それでも、クレープが美味しいよと宣伝しながら友達を連れてきたりしていた。宣伝をしながらも、自分はオッパに会えるのが嬉しかった。でも、もうそんな宣伝もいらないだろうと思う。だってメディアが入っているんだもの。学生が宣伝するのとはわけが違う。だけど、メディアが入るような人気店になったのが自分のことのように嬉しい。 「お待たせ」  そんなことを思っていると頭の方から声が聞こえる。オッパの声だ。アイスコーヒーを片手に立っていた。 「ううん。疲れてるのにごめんね」 「いや、俺はいいけど、お前が遅くなったらおばさんとおじさんが心配するぞ」 「大丈夫。今日はオッパと会うって言ってきてあるから」 「そっか。で、話しってなに?」 「雑談とかなしにいきなり?」 「そんなことしてたら遅くなるだろ」 「そうだけど……」  少しでも長い時間一緒にいたいという思いは届かないらしい。そう思うとちょっとため息をついてしまう。失恋する前に少しだけ。そういうのはダメなのかな。きっとオッパは、女一人で夜道を帰らせるのが危ないとか思っているんだろうな。でも、オッパは1人では帰さない。いつも家まで送ってくれる。きっと今日もそうするだろう。でも、今日は1人で帰る。だって、私が泣いたら、周りの人はオッパが泣かせたと思ってしまうと思うから。まぁ実際、泣くのはオッパのせいではあるんだけど。 「とにかく話せ。話したいことがあるって言ってただろ」 「うん」  失恋しに来たと思っているのに、いざとなると言葉が出てこない。でも、あまり遅くなるわけにはいかないだろう。覚悟を決めなきゃ。 「あのね、オッパ。私、オッパのこと好き。子供の頃からずっと」  言った! これだけの言葉を言うのに、どれだけ勇気が必要だったんだろう。でも言ってしまった。口から出てしまった言葉はもう取り戻せない。そして、私の言葉を聞いたオッパは少し驚いた顔をしている。オッパは少し鈍感なところがある。だから、気づいてない可能性もあった。でも、前に明日海を呼び出したこともあるから、明日海がオッパに話していることも考えていた。でも、この表情を見ると言ってなかったんだろうか。  オッパは少し驚いた顔をしたあと、下を向いて小さく息を吐いた。 「知らなかった?」  私が続けるとオッパは苦笑いを浮かべた。 「最近まで知らなかった。でも、最近のお前の様子を見てたし、明日海を呼び出したんだろ。それで知った」  やっぱり明日海を呼び出したことで気づいたか。というより、なんの用だったかも聞いたのかもしれない。でも、そっか。気づいてたよね。 「でも、ソヨンの気持ちには応えてやれない」 「うん……」  失恋、した。わかってた言葉なのに、実際にオッパの口から聞くと心にナイフが刺さったように痛む。馬鹿だな。オッパの心の中に私がいるスペースなんて、”従兄弟”っていうカテゴリーの中にしかいないのわかっているのに。なのに痛い。

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