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笹森くんはナニでできているの? 1

 笹森は、きっと花と甘いもので出来ている……  きつくなってしまったために踵を踏んだ上靴を眺めながら、渋々と向かった自教室の扉を開く。  途端、神崎は思わず目をしばたたかせてクラスのプレートを見上げた。  素っ気ない「2組」の文字だ。  間違ってはいないはずなのに、非日常を表現するかのように床一面に広がるのは薔薇の花の絨毯で、その光景に思わず立ち竦む。  よくよく見ればそれが作られた偽物だとわかるのだけれど、それが床一面にぎっしりと敷き詰められているとなかなかに圧巻で、思考を奪うには十分だった。  はっと我に返り、神崎は辺りを見回す。   「……おい、笹森?」  文化祭の手伝いなんて下らない と思ってサボり回っていたのだが、担任にサボり場所を尽く見つけられてはどうしようもない。  延々と説教され続けるのも腹が立つ……と、結局説教を食らうことに比べたら面倒な文化祭の手伝いをしている方が静かな分いくらかマシだと、明日を本番に控えてやっと手伝いに来たところだった。  何せ、担当が笹森だ。  やぼったい中学生……いや、小学生のままのような髪型と、それから同じようにやぼったい丸くて大きな眼鏡。  大きな声で喋っているところも、羽目を外しているところも見たことがない、小さく大人しい、そんな典型的な真面目くん。   園芸部なせいでいつも花を弄ってて、それに甘いもの好きなのかいつも友人たちとお菓子を交換し合っている、そんなイメージしか湧かない生徒だった。    多分とかそう言う前に、絶対に自分とは正反対の人種だろうと見てわかる存在だと神崎は認識していた。  父親似のごつい体と厳めしい顔と、中身も似たために学校と言う小さな枠組みが窮屈で仕方なかった。  そのお陰で素行不良を叩き直すためにと、この「亜雁(あかり)学園」へ放り込まれて寮生活になったのは神崎にとっては誤算だ。 ただ、幸か不幸か学校側もこの手の人間の扱いに慣れているのか、そう言う奴が放り込まれやすいからか、自由に学校外に出ることができないと言う点を除けば、別段不自由もなければ取り立てて反抗する理由もないような生活だった。   「   ────なんだ、居ねぇな」  花を作るのを手伝えと言う話だったが、箱から零れて床が埋まるまで作ってあるのだから、数は十分なようだ。  よくこれだけの数を作ったもんだと、神崎は感心しながら辺りを見回す。    足元の花を一つ摘み上げてみれば、緑とピンクの養生テープで作られているのが分かる。  紙でできていないからか存外しっかりとしていて、細かいことに中には黄色い養生テープで花芯も作られていた。

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