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第8話
しかしメルヴィン自身はそれで満足してなどいなかった。
彼はもっと自由を手に入れようとしている。
彼が男娼に来たのも手段の一つで最終目的ではない。
というのもここに留まったとしてもいつか飽きられて使い物にならなくなる。
使いまわされた中古品の未来はたかが知れている。
再びオークションに出され安値で買い叩かれ、その後は想像を絶する悲惨なものだ。
最初に新品のまま奴隷として買われたほうがいいと思えるほど。
だからこそ彼はここを抜け出したかった。
メルヴィンの真の目的はここで自分を大事にしてくれそうな駒を見つけることだった。
特定の人物の所有物になりたくないわけではなく、自分の思い通りに動いてくれて楽をさせてくれる相手が欲しいのだ。
飼われるのではなく逆に相手を飼うことが出来る、主導権を握れる相手。
実際これまで何人か候補はいた。しかし、どの人もアルヴィンを買うまでには至らなかった。
理由は様々で家庭の問題や資金的な問題や他のお得意様の根回しなど。
中には妻子持ちでかなりの資産家の男がいた。
彼はメルヴィンにかなり惚れ込んでいてそこに付け込まれた。
メルヴィンは彼を誑し込んで思いのままに出来る駒と化けさせた。
計画は途中まで順調だったのだが、成功には至らなかった。
男は妻子に捨てられ、莫大な財産のほとんどを失った。
財産のない男にメルヴィンが靡くわけもなく、あっさり切り捨てられた。
それからも何回か試みたが、全て失敗に終わっていた。
この出来事はメルヴィンにとって予定外だったが本人はたいして焦ってはいなかった。
まだ1年しか経っていないのだ。すぐに飽きられるわけがないし、ナンバーワンをそう易易と捨てるわけがないという余裕が彼の中にあった。
(こんなところ早々に出て行ってやる)
客のいなくなった部屋のベッドに腰掛けながら次の策をめぐらせていた。
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