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第8話
陽助との同居開始から早くも1週間が経った。
初日からも感じてはいたが、陽助との生活は結構楽しかった。
相性が良いのか、会話のテンポも合うし、一緒に生活をしていると言えども変に気を遣う必要がない陽助の雰囲気は、なんなら一人暮らしをしているより活気があって良いくらいだ。
「日差しが暑いなぁ」
陽助がパタパタと手で風を送っている。
今日の大学は昼すぎからなので、いつもより遅い出発だ。
「今日の晩御飯、何がいいかな?」
「ん〜綾人が作ってくれるんなら親子丼がええなぁ」
「別に俺が作る分にはいいけど、親子丼は3日前食べただろ…」
「そうやけど、美味しかったんやもん」
親子丼はお肉と卵を火にかけるだけの比較的時間がかからない簡単な料理だ。
今日の夜はバイトがないのでいつもより凝った夕食を作ろうと思い聞いてみたのだが…。
「陽助が気に入ってくれてんなら親子丼にするか」
「ほんま?やった〜!」
話をしながら歩いていると、あっという間に大学に着いた。
「じゃ、また帰りになったら現れるからな」
「ああ、よろしく。じゃあ後でな」
綾人は陽介と離れ、教室へ向かう。
大学では周りの友達への説明も面倒くさいし、通っていない奴が毎日来ているのもおかしな話なので、陽助は姿を隠している。
教室に入ると、眠そうな端留が先に席についていた。
「綾人、おはよ〜」
「おはよ〜ってお前、相変わらずの夜型人間だな…」
時刻はとっくに午後を過ぎているのだが、端留はさっき起きたかのような顔だ。大学生らしいと言われればそうなのかもしれないが。
先生が入ってきたので急いで綾人も席についた。途中寝かけてた端留を何度も起こしながらだったが、今日の講義は無事終了した。
「やっと終わった〜」
端留と一緒に外に出る。
「お前、あんだけ寝てたから元気そうだな?」
「はは、いつも起こしてくれる綾人にはちゃんと感謝してるって!…あ」
「?」
端留がいきなりまるで何かを叩き落とすように、綾人の顔の横で拳を握った。
「っ!?え………何?どした?」
「あー、蚊が飛んでたかも」
「蚊?……………うぉっ!え?陽助?」
「…………」
何故かいきなり陽助が姿を現し、綾人と端留の間に立った。
「え、何?何かあった?」
「……ねぇ、あの人カッコよくない?」
「え!背高いイケメンいる!」
「あんな人いたっけ?」
ちょうど授業が終わって学生が多い時間だったので、陽助が現れるや否や、周りの女子学生達が騒ぎ始める。
「あの、ウチの大学の人ですか?何年生ですか?」
「学部どこですか?」
「えー、彼女いるんですか?」
如何にも一軍女子のような可愛らしい人たちが早速陽助に話かけている。
「え?いや俺は…」
「声もかっこいい〜!」
「めちゃ背高いですね?」
陽助が可愛い女の子たちに囲まれ、たじろいでいる。
その様子を見ていた綾人は何だか心がざわめくのを感じた。
「…先帰る、端留じゃーな」
「え、うん、じゃあね」
「ちょお待て!」
「え、関西弁?」
「方言男子かっこいい〜!」
盛り上がっている女の子たちの声を聞きたくなくて、綾人は駅まで走った。
そうして、ちょうど来ていた電車に乗り込んだ。
電車に乗った後も心のざわつきは止まず、綾人は目を閉じた。
(………何なんだ)
つい陽助を置いてきてしまったが、家の場所は知っているし、大丈夫だろうと思うことにした。
(…何となく、顔見たくないし)
電車を降りてトボトボと歩く。
ぼーっとしていたからか、気づくともう自分のアパートの前に着いていた。
[……エサ]
「え?」
後ろから声がして振り向く。
綾人のすぐ後ろにいたのは、妖だった。
「…!また、」
逃げる暇もなく瞬時に妖に覆われてしままった綾人には、逃げる術がない。
(こんな時に、現れるなよ…っ!)
[ヤット…スキガデキタ…!]
(!喋れる妖…?今までよりも強いのか…っ?)
綾人自身の体が、その予想が当たっていることを教えてくれた。
綾人の体は強い邪気に当てられてもう動かず、うめき声すらも出せなくなっていたのだ。
こんなとき、いつも助けに来てくれていた陽助を思い出す。
今回も…なんて虫の良い話かもしれないが、綾人は願わずにはいられなかった。
(陽助…っ!)
「ちゃんと俺がやった人形持ち歩いてて、ええ子やな」
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