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第11話

「ん………」 髪を撫でられる感触で、綾人は目を覚ました。目の前には、こちらを見つめる陽助の顔があった。 「おはよ、身体はどうや」 「……」 おはよう、と返そうとしたが、口がパクパクと動くだけで、声が出ない。 「…無理させてしもたな。水持って来るわ」 ベッドから抜け出しキッチンへ向かう陽助は上半身に何も身につけていない。 昨夜の情事が自然と思い出され、綾人は顔を見られたくなくて布団の中に潜ってしまった。 「綾人〜?水持ってきたで」 すぐにベッドに戻ってきた陽助が布団を捲ると、中には顔を赤くした綾人がいる。 「ふっ、思い出して照れてんのか。かわええ」 「……い"い"から、よ"こせ」 赤い顔のまま睨んでも全く怖くないのだが、綾人なりの照れ隠しなのだろう。 水を飲み干した綾人に陽助が話しかける。 「痛いとこはないか?」 「………後ろが変な感じする」 「ハジメテだったんやもんな?」 「っ!うるせー!」 拗ねて背を向ける綾人を、陽助が後ろから抱きしめる。 「あーやと。揶揄ったんやないねん。嬉しいな思うて」 「うるせー!離れろ!」 ジタバタと踠く綾人だが、陽助にとっては痛くも痒くもない。しばらく好きにさせていた陽助だったが、綾人の動きが小さくなってきた頃、耳元で囁く。 「…こっち、向きや」 ピタリと動きを止めた綾人の耳がどんどん赤くなって来るのが後ろからでもよくわかる。しかし陽助は囁きを止めない。 「綾人、こっち見て」 「〜っ、わかったから耳元でしゃべんな!」 綾人がクルリと向きを変え、陽助と向かい合わせになる。耳元で囁かれるのは回避したものの、今度は陽助と見つめ合う体勢になってしまい、さらに心拍数は上昇する。 「〜〜〜っ」 「怒ったり照れたり忙しい奴やなぁ」 陽助は真面目な顔で綾人の頬を両手で掴んで視線を合わせる。 「っ!?」 「綾人。………昨日お前が一人になってたとき、俺めっちゃ焦ったんやからな」 「……う」 「今度からは、どんな理由があろうと、絶対俺のそばから離れんな。ええな?」 「………うん」 「わかればええねん」 ぎゅっと綾人を抱きしめる陽助の顔はどこか満足げだ。 「…陽助」 綾人はそんな陽助の顔を見上げて名前を呼ぶ。 「どしたん?」 「…………なんでもない」 「そうかー、俺も好きやで」 「なっ!俺は言ってない!」 「はは、ちゃんと聞こえたで?」 ベッドの上で戯れていると、綾人は時計が目に入る。 「あっ!!!やべ、大学!痛っ」 慌てて起き上がると腰に痛みが走る。 「無理せんとき」 陽助の言葉に、綾人は誰のせいだよ、と心の中で悪態を突きつつも、自分からも求めてしまった自覚があるので言葉にはしなかった。 「まぁ、1回だけなら……セーフか」 「綾人は真面目やな〜」 「友達は逆にギリギリを攻めて休みまくってるけどな。……そういえば、昨日なんで端留と見つめ合ってたんだ?」 陽助が急に大学内に姿を現したのも、まるで端留に何か用があったからなような雰囲気だった。 「…アイツ、どんな奴や?」 質問に質問で返す陽助。 「え?端留は……まぁ、変なところもあるけど、気が合うし楽しい奴だよ」 「ふ〜ん?」 「お互い一人暮らしだから、しょっちゅう泊まり合ったりもしてるし」 「ふ〜ん?」 陽助の方から聞いてきたくせに、いざ綾人が答えると興味がなさそうかのような適当な相槌ばかりだ。 「……何だよ。今度はお前が嫉妬か?」 陽助は仕返しとばかりにニヤニヤと見つめてくる綾人の頭を一度撫でる。 「………そうや。嫉妬してまうからもう端留くんとやらと話さないで?」 「お前、束縛系かよ」 またふざけ合っていたつもりだったが、綾人はまだ知らなかった。陽助の瞳の奥に宿った感情が、ただの嫉妬ではないことを。

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