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第12話
陽助は朝から神榊 の屋敷を訪れていた。
襖を開けて部屋の中に入って来る陽助に神榊は声をかける。
「来たか。…全く、お前ときたらあれからまともに連絡すらよこさないで」
「それはほんまにすまんかった」
綾人の部屋で人形を通じて連絡をとったのは、1週間ほど前だ。
「神榊さんは相変わらずコイツを信用しすぎなんだよ」
金髪の少年が、陽助を刺すように睨む。
「……綾人くんは一人にして大丈夫なのか」
「おん、結界張ってきたし、白虎置いてきたから多少はな」
陽助が空いている座布団に腰を下ろすと、神榊と共に最初から部屋にいた他の2人が口々に話し始めた。
「急に俺たちを呼び出すなんてどうしたんだ?」
背が高くて体格が良い、優しそうな顔立ちの青年が陽助に尋ねる。
「綾人くん?とやらの話、そろそろしてくれるんですよね?」
一番奥に座っているメガネの青年は柔らかい表情を浮かべつつも、瞳の奥はひどく静かだった。
「……ああ。神榊さんには言うたけど、単刀直入に言うと、厄養が出現した」
「……はぁっ!?」
「え?」
「嘘でしょ…」
陽助の言葉を聞き、3人の纏う空気に一気に緊張が走る。
「だって、まだ数十年しか…」
「厄養で間違いないんだろうな?」
「それが綾人って奴?」
3人が、矢継ぎ早に質問する。
「せや。まだ出会って2週間くらいしか経っとらんけど、妖の寄せ付け具合が異常や」
「でも、それだけじゃ確証は薄いんじゃないか?」
「まぁ聞けや。もちろんそれだけやない。なぁ、神榊さん?」
陽助に話を振られた神榊の元に、一同の視線が集まる。
「ああ。彼には私の秘術が効かなかった」
「…………」
部屋の中が、沈黙に包まれる。
「…ということは、今回僕たちが集まったのは、"隔離"の相談のためですか?」
沈黙も束の間に、驚きつつも冷静さを忘れないメガネの青年――蓮が話を続ける。
「ここからが本題や。お前らに頼みがある」
「………良い予感はしねぇぞ」
「まあ、まず聞こうよ」
金髪の少年――勇太郎を、体格の良い青年――純平が宥める。
「綾人の存在は俺らだけの秘密にしておいてくれへんか」
陽助は4人に頭を下げる。
「はぁ!?おまっ、何言ってんだ!?」
「陽助、どういうことだ」
突然の展開に、勇太郎だけでなく神榊も驚いた様子だ。
「……もしかして、陽助は、綾人くんのことが好きなの?」
「はは、さすが純平やな」
「陽助、お前…」
「ちなみに、両思いやで?」
「こんなときにまでふざけてんなよ?」
いぇい、とピースでふざける陽助の胸ぐらを勇太郎が掴む。
「はは、すまんすまん」
「はは、じゃないですよ。厄養は妖を惹きつける存在。他の多数の人間のためにも、"隔離"は彼の宿命です」
蓮に嗜められた陽助は、勇太郎の手を振り払って言い返す。
「あんなん、隔離っちゅーか投獄やろ」
「陽助。てめえ、冷静になれよ。厄養を野放しにして人間界はどうなってもいいって言うのか?増えた妖を鎮めるのは俺らしかいねぇんだぞ!?」
勇太郎の怒りはピークに達している。
「違う。綾人の周りには常に俺がいるようにする。綾人に寄ってくる妖も俺が全部対応する」
「陽助。お前の無謀な望みを叶えてやったとしても、上にもいずれ必ずバレる。そうなると綾人くんの"隔離"は免れんぞ。お前も罰を受けることになるだろう」
神榊は陽助を諭すように静かに話す。
「…そうだとしても、俺は持てる時間を最大限綾人と過ごしたい」
「はっ、知り合ってたった2週間なのにそんなにお熱いなんてなあ」
「陽助さん、あなたらしくないですよ」
「陽助………」
4人の、心配が滲む表情を見回した後、陽助は再度口を開く。
「…自分でも、無謀なことはわかっとる。せやけど、止められない」
「…………」
「神榊さんにもお前らにも絶対迷惑はかけない。ただ、一応報告させてもろただけや」
「…フン、お前1人で何とかするってなら、俺は知らねーぞ。勝手にしやがれ」
勇太郎は立ち上がると部屋から出ていった。
「あっ、勇太郎さん!
……陽助さん、僕はあなたを尊敬してますけど、今回のことは納得いきません」
「すまんな」
「あなたの気持ちもわかりますよ。前の恋人も厄養だったと聞いてましたから。その未練が今まで後を引いているのでは?」
「それは違う」
「…そうですか。僕ももう行きますが、命は大切にしてくださいね」
「…ああ」
蓮も部屋から出ていくと、それまであまり発言していなかった純平が口を開いた。
「………陽助。
お前、今度こそ“守れなかったら”どうする?」
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