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第17話
「っ!?綾人?」
綾人は陽助を強く抱きしめたまま、動かない。
陽助は突然のことに目を瞬かせたまま、腕が行き場を失った状態で固まった。
「……陽助…っ!」
「え、泣いてるん!?」
慌てて綾人の顔を覗き込むと、綾人の瞳が潤んでいた。
「え、綾人?どした?…やっぱり俺が怖いか?」
「違うっっっ!!!!」
「うおっ、びっくりした……じゃあなんで?」
綾人はずび、と鼻を1度啜ると話し始めた。
「人間のために永遠の時間を生かされて、ずっと命かけて妖と戦って。お前の覚悟はすごいよ…っ」
陽助は思いも寄らなかった綾人の言葉に目を見開いた。
「俺のために、泣いてくれてるん…?」
「…っ、そうだよっ!」
陽助は、反射的に綾人を抱きしめ返していた。
「…お前はきっと300年間でたくさんの人間の命を救ってきたんだな」
「…救い切れなかった命もある」
「少なくとも、お前がいなきゃ俺は今この世にいない!」
「綾人…」
「お前、本当にかっこいいよ」
2人はしばらくの間、抱きしめ合っていた。
「不老ってことは、大事な人が老いていくのを側で見て、先立たれるのを見送らなきゃいけないってことや」
「………そうだよな」
「そないな心壊れることを経験するくらいなら、大事な人なんていらん…って思うてたんやけどな」
「…離れるなら今のうちか?思い出が増えて別れが辛くなる前に」
陽助の腕の力が更に強くなる。
「理屈ではそれが正解よな。せやけど、綾人と離れることも、頭が拒否しとる。困ったもんや」
「俺が早く死んでも、長生きしても……結局お前を苦しませるんだろ」
綾人が苦笑いを浮かべる。
「…その苦しみを埋めるくらいの良い思い出、作っていこうな」
「ふは、じゃあ長生き一択だな」
2人は一度腕の力を緩めて向かい合い、お互いの顔を見て微笑み合う。
命絶えるその時まで、ずっと。
陽助の手を離さないようにいようと綾人は決心するのだった。
・
「はぁ…。行きとうない」
「仕事だろ、行けって」
「あんなに熱い約束を交わした翌朝に離れ離れになるなんて…」
「ああああああ!!!」
綾人はチラリともう1人の人物に目を向ける。
その人物とは、今日陽助が不在の間に綾人の護衛に来てくれた純平だ。
「仲良しだね」
純平はにこりと笑みを浮かべている。
「お前っ、人前で恥ずかしいこと言うなっ!」
「え〜、本当のことやん」
「いいから早く行け!」
「うう〜、じゃあ行って来るからな、早く終わらせるから」
半ば強引に陽助を外に出した綾人は、純平に向き直る。
「あ、改めて、甲斐綾人です。今日はよろしくお願いします」
「初めまして、綾人くん。俺は純平。陽助とは古くからの付き合いなんだ」
「お話は少しだけ聞いています。一番の理解者だって」
「アイツ、そんなこと言ってたんだ。嬉しいな」
タレ目を細めて綺麗に笑う純平。
「あの、全然好きに寛いでもらっていいので!」
「お心遣いありがとう」
純平は人当たりが良く、そこまでコミュニケーション能力が高くはない綾人もすぐに心を開いた。
「……………」
「……………」
護衛のために来てくれてるんだから、必ずしも仲良くなる必要はない…とは思いつつも、一緒の空間にいるのにお互い無言なのも居心地が悪く、綾人は純平に話しかけてみる。
「…あの、お茶でも飲みます?」
「ありがとう。じゃあいただこうかな」
「よかったらこのお菓子も一緒にどうぞ」
「すまないね。ありがとう」
「………」
「………」
「…あのっ!一緒にゲームでもやりませんか?」
「ふはっ!」
「!?」
ゲームに誘ったら笑われた…と呆然としている綾人に慌てて純平が弁解する。
「ご、ごめん!いや、良い子だなと思って」
「え?」
「俺はただ護衛で来てるだけなのに、色々気を遣ってくれてさ」
「いや、俺のためだけにわざわざ来てもらってるし…」
「それを当たり前に思っていないところが君の素敵なところだよね」
ストレートに褒められてなんだか照れ臭くなる綾人。
「陽助が惹かれる理由がわかった気がするよ」
「アイツの前では、ついキツくなっちゃうんですけどね…」
「ツンデレなんだね」
「ツ、んっ!?……そうなのかな」
「まあ、陽助もそれをわかってるから大丈夫さ」
「…あの、陽助と付き合いが長いんですよね?」
「うん。それなりに」
綾人は昨夜から気になっていることがあり、純平に尋ねてみようか迷っていた。
「その…」
「うん?」
純平は、モジモジしている綾人を急かすでもなく、綾人が話し始めるのを待ってくれていた。
「……陽助の今までの"大事な人"についてなんですけど」
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