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第18話
「……陽助の今までの"大事な人"についてなんですけど」
「……ほう」
「昨日、陽助から永遠の命のことを聞いて」
「不老のこと、知ってるんだね」
「はい。その時陽助、『心壊れることを経験するくらいなら、大事な人なんていらん』って言ってて」
昨夜の陽助の悲痛な表情を思い出しながら、綾人は話を続けた。
「なんか、今までにそういう経験をしたことがあるように感じたんですよね」
「……鋭いね」
「やっぱり、あるんですね?」
「……うーん、言って良いのかなぁ」
「詳しくじゃなくてもいいので」
意外と食い下がる綾人に根負けしたように、純平は小さく息を吐いて話し始めた。
「100年とまではいかないけど……数十年前に恋人がいたよ」
「そうですか…」
「その人はまだ若かったから、陽助と過ごした時間はそこまで長くなかった。……でも、それでもアイツは結構荒れたなぁ」
「………」
「その時からだよ。大事な人を作ろうとしなくなったのは。…でも、そんな陽助がその決意を翻してまで一緒にいたいと思えたのが、君なんだね」
「……どうやっても陽助を苦しませちゃうけど。昨日、苦しみがわからなくなるくらい、思い出をたくさん作ろうって約束したんです」
「そっか」
純平は今聞いたこの話を不思議に感じた。
(陽助は未だにこの子に「厄養」のこと、言ってないのか…?)
厄養が出現したことはいずれ必ず"上"にバレるであろうこと。
そして、綾人が20歳になったらさらに妖の出現が増え、綾人は危険に晒されるであろうこと。
そんなことを知っていたら、綾人はきっと簡単に「思い出をたくさん作っていこう」だなんて言えないはずだ。
(まさか、陽助は綾人くんに全てを捧げる覚悟で、"上"にも歯向かおうとしているのか…!?)
誰の目の届かない遥か遠く離れたどこかで、2人切りで過ごす。それが陽助が望む生活なのか。
純平は陽助の覚悟に畏怖すら感じた。
だが同時に、自分たちの運命のことも考えていた。
妖との戦いで命を落とすその時まで、何百年だって何千年だって戦い続ける。周りの人たちに何度も何度も置いていかれ続けながらも。
人間のために奮闘するこの仕事を誇りに思っていないわけではない。しかし、まるで兵器のように扱われることについて、皆口には出さないが葛藤を抱えていると思っている。
誰だって、還妖隊への入隊を決めたときには思ってもいなかった。
ーー永遠という時間がもたらす残酷さを。
還妖隊員としては勿論止めるべきだが、友としては……。
(…陽助を止めることはできないか)
「………純平さん?」
「…ああ、ごめんつい昔を思い出してね」
「すみません、無理に話をさせてしまって」
「全然、どうってことないよ。…俺は、君たちのことを応援してるから」
「!ありがとうございます」
純平と綾人は打ち解けた様子で、先程綾人が誘ったゲームを一緒にプレイするのだった。
・
「ただいま〜、疲れた…」
「おかえり」
「お疲れ様」
「綾人〜、癒して〜」
「ぐっ、急に来るな!」
陽助の体重に押し潰されて床に倒れ込む。
「チャージできたわ。…安心したら腹減ったなぁ」
「飯食うか。準備するから待ってろ」
「おおきに!!」
綾人がキッチンへ向かうのを確認すると、陽助は腑抜けた表情を消して、純平に小声で話しかける。
「今日はありがとな。妖はどうやった?」
「ああ…ちょこちょこ雑魚が寄ってきてたけど、結界と俺の式神で何とかなったよ」
「そうか、よかったわ」
「でも、こんなに一箇所に集中して妖が集まるなんて、本当に異常だよ。厄養の力は凄まじいな」
「…せやな」
「まだ、綾人くんには厄養の話はしていないんだろ?」
「…綾人を怖がらせたくなくてな」
「もう20歳を迎える日だって近づいてるんだ、このままにしてはおけないよ………お前ならわかってると思うけど」
「……近いうち、伝える」
「…じゃあ、俺はそろそろ戻るな」
玄関に向かおうとする純平に気づいた綾人が声をかける。
「あれ、純平さんもう帰っちゃうんですか?ご飯、一緒にと思ってたんですけど」
「お心遣いありがとう。でも実はまだ仕事があってさ」
「そうだったんですね。じゃあまた今度、お礼させてください」
「お礼なんて気にしないで。じゃあね」
「お気をつけて」
バタン、と玄関の扉が閉まると同時に、陽助が後ろから綾人に抱きつき、顎を綾人の頭に乗せる。
「腹減った〜〜」
「デカい赤ちゃんだな……もう盛るだけだよ」
「わ〜い」
2人は夕食のため一緒にキッチンに戻って行った。
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