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第1話『俺の事情』
高校に入学したら、可愛い彼氏を作る!
間違いじゃないです。
大事なことなので、もう一度。
可愛い『彼氏』。これで正解です。
* *
俺、日下部 大地 の恋愛対象は同性である。
そのことに気づいたのはK中学に入学して間もなくのことだ。
俺は小四の時からK小学校の野球クラブに所属していた野球少年だ。当然中学の部活も野球部一択だった。K中学野球部は市内でも強豪校で県下にも名を轟かせている。野球の強い高校への進学を目指す、ガチの部活勢の集まりだ。
それは分かっていた。
しかしその厳しさには入部当初から辟易していた。そんな俺の楽しみといえば部活前後の部室だ。練習着に着替える部員たちの裸体をどきどきしながら見ることだ。
小学生の頃は感じなかった。
中学ともなると二学年上の男子は人によってはもう大人のような体つきをしている。それを初めて見た時、俺の心臓は煩く騒いだ。
思えば、小学生時代も幼いながらに女子のことを可愛いとか好きだと言う友人もいたが、俺は一度もそんなふうに思ったことはなかった。
こういう状況になり、俺は合点がいったのだ。
『ひょっとして俺は男が好きなんじゃないのか?』
と。
そう思い始めて二か月ほどが過ぎた部活後のこと。
二か月過ぎれば多少は毎日の厳しい練習にも慣れ、大勢いる先輩方の名前と顔が一致してくる。
その日俺は部活を終え、一年生の部活友だちと一旦学校を出た。談笑しながらしばらく歩いていたところで気づく。
「あ、水筒忘れた! ごめん、先帰って」
俺は急いで学校に戻った。
(やべーっ。忘れたなんて言ったら母ちゃんにどやされる)
グラウンド側の門はまだ開いていてそこから入り、薄暗いグラウンドを横切り、ベンチまで走った。そこに自分の水筒を見つけた。
「あ、あったよ〜、良かった〜」
水筒をスクールバッグにしまい、ふと見ると部室に電気がついていた。
(あれ? まだ誰かいるのかな?)
そこでやめればいいのに、興味津々で窓から覗いてしまった。着替えもするのでカーテンはついているが、おあつらえ向きにほんの少し開いていた。
「え……っ」
俺は声に出してしまいそうなところを自分で自分の口を押さえた。
部室の中には主将と副主将がいて、抱き合ってキスをしていたのだ。
主将も副主将も、野球が上手くて背も高くイケメン。女子にモテモテだ。
(そんな二人が?!)
驚いたが、二人は幼馴染で野球の強い同じ高校を目指していると聞いている。
(確かに二人の間には入っていけない何かを感じることが……。主将、副主将とか幼馴染とかだけでなく、こういうことなのか!)
妙に納得をした。
キスをする二人を見ながら、心臓が痛いほどドキドキする。
それからそっと離れ、グラウンドの半分まで来たところで走りだした。
気持ち悪いとかは思わなかった。寧ろうらやましい。自分もあんなふうにしてみたい。
(もちろん、俺と同じ男と!)
その出来事で俺は自分の性癖を確信したのだ。
K中学で三年間野球部は続けたものの、揉まれすぎて嫌気が差し、さらにスタメンにも一度も入れず、きっと向いてなかったんだなーと見切りをつけた。
しかし、スポーツは好きだ。
高校でも運動部に入りたい。しかし、それはけして野球部ではない。
さて、何をする?
周りの友人たちが三年間ですくすく育っているというのに、俺は三年間でやっと百六十センチを超えたところ。身長がものをいう競技は無理だ。
実は俺は自慢できることが一つだけある。
足が速い!
俺は陸上の強いT高校を受験することにした。
そして!
中学時代には出来なかった恋愛というものもしてみたい!
声を大にして言う。
俺は、可愛い『彼氏』と高校生活を謳歌したいんだ!
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