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第10話

「じゃ、昼代は俺がだす」  亮太が息巻いて言ってくれたが、昼どきで、どこのレストランもすぐには入れそうにない。  ファーストフード店や、ラーメン店も沢山の人だ。  サトは人混みが苦手だ。  色が見えすぎて、気分が悪くなる。  それでも、小さい頃よりかは、だいぶマシになってきたのが。  亮太が、何かを調べてきてたのか、スマホを見て歩き出す。  繁華街の裏に入り込むような道を通って、小さなセレクトショップ、美容院が並ぶ1つの店にたどり着いた。  ランチをしているカフェだ。  さっきまで沢山の人がいたのに、ここは静かだ。 「美容室のお兄さんが教えてくれたんだ。サト人混み苦手だろ? ここは穴場なんだって」  色の話も、そのせいで具合が悪くなるという小さい頃の話を覚えていてくれた。  胸が熱くなる。  優しくてかっこ良い。    ランチを食べながら、亮太が昔の思い出話をしてきた。  昔、絵の先生の展覧会を見に行って迷子になった話だ。 「あれで、サト泣いちゃったもんな」 「……?」 「どうしよう。迷子になっちゃったって」 「ち、違うよ。泣いたのは、りょうちゃ、亮太だよ。その後、僕が母さんにそれをチクったら喧嘩になったんだよ」 「えー? そうだったかー? 喧嘩になったのは覚えてるけど」  と言う怪訝な顔の亮太に畳みかける。 「そうだよ。僕が慰めたら、泣き止んで笑ってくれた」 「うーん」 「その時、僕は……」 「うん?」  ――宝物をもらったみたいに嬉しくなったんだ――なんて。そんなこと言ったら気持ち悪いよな。 「だから、僕は泣いてないよ」  そう言ってごまかすと、亮太は、なにか懐古するような目をして言う。 「うーん、そうか。あの後、喧嘩になって、しばらく話さなくて……寂しかったことは覚えてる」 (ああ、同じだ)  嬉しくて笑顔で返す。 「これ、旨いよな」そう言って、亮太はランチのロコモコ丼を掻っ込んだ。  サトも同じメニューを掻っ込む。  勢いが良すぎて、お互い、時々むせる。それを笑い合った。  髪型や雰囲気が大人っぽく変わっても、中身は亮太のままだった。  昔から知っている亮太が、僕を見てくれていることが嬉しい。  このままで。  ずっとこのままでいい。    ランチを食べた後は、人混みを気にしながら、亮太が行きたがっていたスポーツ用品店に行った。  好きなサッカー選手のユニフォームレプリカを目当てにしていたらしいが、売り切れになっていた。 「うわーくそー」  天井を仰いで、数分考え事をしてから、「ちょっと待って」と店の奥にいた店員さんへ話かけにいく。  少しして、亮太が戻ってきた。 「今度、入荷したら、連絡してくれるって」  スマホをいじりながら、「割とすぐらしいからさ」と呟いた後、サトを見つめてこう言った。 「また、一緒に出掛けよう」 「え? う、うん」 「やった!」そう言って笑う顔に胸が苦しくなる。  このままで。  このままでいいんだ。  僕の気持ちは……。知られてはならないのだから。  亮太のスマホが鳴った。店を出て、電話に出る。  僕は、少し離れたところから亮太を見ていた。  亮太の表情が少し曇る。困ったような顔をしながらも笑っていた。  電話を終えると「ごめん」と言って手を顔面で合わせて言う。 「この後、サッカー部の先輩にカラオケ誘われちゃって。サト……、一緒に行く?」  言いずらそうに申し訳なさそうに言う亮太。  優しいよな。 「行かないよ」僕もやんわりと返す。 「だよな……なんか……ごめん」 「大丈夫。久しぶりに……、りょ、亮太と出掛けられて楽しかったよ」 「俺も。また連絡するから」  真っすぐに見つめられて、恥ずかしくなったけど、僕も笑顔で返した。  

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