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第13話

 *****    亮太は、選手に選ばれたようで部活動で毎日朝早く、帰りも遅い。  夏休みにはいって、ほぼ毎日、部活動に明け暮れている感じだ。  サトの家に夕飯を食べに来ても、よほど疲れているのか、食べるだけ食べてすぐに家に帰って行った。  二十人近くいる一年生の中で選手として選ばれたのは、亮太と他二人。  選手だからと特別扱いはされず、一年生としての雑用もこなしている。  そして、練習量も増えているのだから、毎日疲れているのは当然のはずだ。    夏休みは、美術部の主だった活動はない。  しかし、先生は学校に来ているし、部室も開いているので、何人かの部員が来て作業している。  特に、彫刻や陶芸は材料が学校に揃っているし、先生自ら制作していることもあって、その専攻の部員が来て先生の手伝いをしていた。  サトも絵を描くだけだが、学校へは毎日行っていた。  理由は、亮太がいるから。  校庭で練習に励む姿を見て、スケッチしている。  朝行って、昼前には帰ってくる。  時々、午後にも学校へ行くこともあるが、周りから変な目でみられないように別の場所でスケッチしたり、図書室に行ったりしていた。    今日は、京香から、祥の練習風景をスケッチするからと誘われていた。  堂々と校庭でスケッチできる彼女が羨ましい。  一足先に京香との待ち合わせ場所へ向かう。  走り高跳びの練習が見える場所は、ちょうどよい木陰になっていていた。  午前中とはいえ、夏真っ盛りの外は暑い。簡易椅子を置いて座る。  京香もやってきた。  その姿に気付いた祥が駆け寄ってきた。  京香もそれに応えている。  楽しそうに話す二人は、周りの目を気にすることなく、手を握り合ったりしている。  二人の色が溶け合って、とても仲睦まじい雰囲気が見えた。  京香が戻ってきて、スケッチの準備をする。 「仲が良いんですね」  サトは、ぼそりと呟くと、少し照れたように「そうね」と京香はそれだけ言った。 「告白したんですよね? それって、その返事ってもらったんですか? 二人は付き合っているんですか?」  突拍子もない質問に京香は目を丸くして、サトを凝視している。 (しまった。変なこと聞いた) 「付き合っているわけじゃないけど、良い関係性だと思っているわ。彼女、私の絵を好きだと言ってくれてるし。私も祥の飛ぶ姿が好き」  そう言うと、祥の方を向いて手を振っている。 「その、サトくんの質問は、恋愛的にということなのかしら?」  京香の質問に生唾を飲み込むしかなかった。  サトの返事を待つわけでもなく、「わからない」と彼女は小さく独り言のように呟いた。  それから、僕たちは、黙って鉛筆を動かした。  セミの鳴き声だけが響いていた。  スケッチが終わり、帰る準備をする。  京香はずっと黙ったままだ。 「京香先輩。すみません。さっき変なこと聞いちゃって」 「……変なことじゃないわ。サトくんの質問、変なことないわ」  京香はいつになく真面目な顔だ。 「好きって、わからない。いろんな意味があるものね。 でも、今は……このままがいい」  京香の朱色に近い鮮やかさが、少し濁って見えた。  悩み、不安という感情は、忙しなく揺れ動く。色も同じだ。 「わかります……」  そう答えたサトの声はすごく小さくて、京香に聞こえているかどうかわからなかった。  校庭では、野球部の練習が始まっていた。  今日は、サッカー部は休みらしく、サッカー部のエリアまで野球部の練習になっていた。  サッカー部がいないのに、亮太の姿を探してしまう。  大きな溜息を吐いて、学校を後にした。  

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