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第15話
「今日は、うちの母ちゃんも夜勤だしさ、出店のいい匂いにつられて沢山買っちゃったよ」
そう言いながら、ドアを開けて招いてくれた。
亮太の家に入るのは、久しぶりだった。
といっても、同じマンションの隣同士なので、同じ作りの部屋に新鮮さは感じない。
出店から買ってきた焼きそば、イカ焼き、たこ焼きやらをテーブルに並べる。
「かなり買ったんだね」
「ああ……、実は……サトの家に行こうと思ってたからさ」
はにかみながら言う亮太に目を奪われる。
「こういうのは外で食べる方が旨いだろうけどな。俺は……サトと食べたかったんだ」
「……」
顔が熱くなる。
嬉しくて死にそうだ。
「ぼ、僕もりょうちゃんと食べられて嬉しいよ」
「りょ・う・た」
頷くのが精一杯だった。
二人きりの食事。
そのうち、外で花火の上がる音がする。
二人して、窓を見る。
そんなシンクロした行動に笑い合った。
「小さい頃は、少しだけ窓から花火見えてたのにね」
サトは、自分の部屋の窓から花火の上のほうだけ見えたことを話した。
今は、マンションの周りに沢山の建物があって見えなくなってしまった。
「俺の部屋から、まだ少し見えるよ」
「え? うそ」
「ほんと、こっち」
亮太の部屋に入る。
机のところにある窓を開けて、指をさす。
確かに、少しだけ見えた。
「ほんとだ。へぇーすごい」
身体を寄せ合って外を見ていたが、あまりの近さに途中から花火どころではなくなってしまった。
すぐ隣にいる亮太の口からさっきまで食べていたソースが香る。
心臓の音が聞こえるのではないかと思うほど、鼓動が早い。
「の、残りの焼きそば食べちゃおうかな」
そう言って、そっと亮太から離れる。
「な、暁士」
薄暗い部屋の中で亮太が見つめてくる。
「AO1のキョウヤが好きって言ってたじゃん? なんで? 他にもアイドルいるだろう?……女のアイドルとかも」
「そ、それは……」
なんて言おう。キョウヤが好きなのではなくて、亮太が好きで。だから似ているキョウヤが良いと思っただけで。
――違う。
そんなこと言ったら、この友達関係がなくなるかもしれない。
「キョウヤが俺に似てるって言ってたじゃん? あれってホント?」
なんで、こんなこと聞くんだろう。
こくりと頷く。
「……」
「……」
亮太は真剣な目でサトを見つめたまま。何か言おうと言葉を選んでいるようだった。
「今度は、キョウヤの絵じゃなくて、俺を描いてよ」
「予選が始まるから、試合出られないかもしれないけど、見に来てほしい」
亮太の目に吸い込まれそうだった。
「もちろん、もちろん行く。亮太を描くよ」
大きな音がして、二人してまた窓の外を見る。
夜空の浮かぶ大きな華が、よく見えた。
触れ合う肩と腕のあたりが熱い。
京香や祥のように手を握り合えることはできないけれど、寄せ合って花火を見ることくらい許されるかな。
今だけ。
亮太が微笑みかけてくれる。
優しい瞳。
好きだ。
京香が言っていた、好きにはいろんな意味がある。
僕に対して、わからない好きでも、好きと思ってくれているのかな。
同じ気持ちであれば……。
ふと、今日ユニフォームのレプリカを見つけたことを話そうかと思った時に、視界の端っこにそのユニフォームが目に入った。
「……?」
「残りの焼きそば、食べよう」
亮太は、そう言って、リビングに行ってしまった。
ユニフォームのレプリカ……買いに行ったんだ。良かった。
もやっとした気分が残ったまま、サトもリビングに戻った。
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