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第20話

 もう一日、学校は休んだ。  その翌日に、サッカー予選ブロック決勝が行われた。  僕は、試合会場には行かなかった。  負けたということを翌週学校に行って知った。  この週末、亮太がサトの家を訪れることがなかったからだ。  毎年、高校サッカー選手権大会決勝に進める常連校ではないが、決して弱い学校ではない。  士気が高まっていた所で、ルーキーの出場で会場は沸いていた。  今年の選手に選ばれた一年生は、他所の学校からも注目されていた。  目を付けられていたといえばそうなのだろう。  亮太が出場し、相手選手のファールで、足を負傷した。  右足の捻挫。  サトは、亮太の捻挫のことも学校に行ってから、足を引きずって歩く姿で知った。  学校で会っても、亮太は変わらず笑顔を向けてくれるが、どこかよそよそしい。  サトも、どういう態度をとったらいいかわからず、避けてしまっていた。  サトが描いた絵には、『空っぽ』というタイトルを付けた。  その絵を顧問に渡す。 「ほー。これは中々秀逸なものができたな」  顧問は、そう褒めてくれたけど、僕にはわからなかった。  美術部の作品は、まとめて市に提出する予定だったが、サトの作品が早くに出来上がったこともあり、それだけ早く提出された。  「平、まだ提出時期に余裕があるから、他の絵も描いてるなら出していいぞ。後は、やることなくなったなら、他の部員の手伝いをしてやれ」  顧問の言葉に頷き、お辞儀して、職員室を出る。  サトは、もう絵を描く気力が失せていた。  他の絵なんて描けない。部活は、手伝いだけで参加した。  京香は、サトの様子がいつもと違うことに気付いて心配してくれていたが、何も答えられなかった。  心配してくれていることに、かえって申し訳なさが募る。  『空っぽ』とつけた絵は、あの日、鏡で見た自画像を描いた。  汚い。醜い。顔半分が見えなくなるように色を重ね、見えている目だけが薄気味悪い光を放っている。  絵を描き上げてから、心の中にあったどす黒い塊が消えた。  消えたというより、心にぽっかりと穴が空いたようなそんな感じだった。  そして、鏡の中で見た、醜い色も見えなくなっていた。

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