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第22話
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市主催の美術展覧会が開催された。
美術部員全員と顧問で学校帰りに会場へ向かう。
会場の中は自由行動で、サトと京香と部長で、見て回る。
絵画のフロアーに三人の絵が、張り出されている。
サトは、京香と部長の絵を見て素直に驚いていた。
いつも部室で絵を描いている時とは違う仕上がりの絵に息をのんだ。
タイトルは『すき』
京香の絵は、蔭谷祥が高跳びをしている姿だった。
真っ青な空に向かって飛びあがる祥が美しく描かれていた。
水彩画特有ののびやかでかつ淡い色が素晴らしく、しばらく目が離せなかった。
「京香先輩が羨ましいです」
小さく呟いたサトの言葉に、京香は微笑んだ。
――好きな人をこんな風に描けて羨ましい。
部長の絵は、夏休みに家族旅行で行った立山連峰の景色画だった。
アクリル絵の具で彩られた絵は自然の広大さを表していて、やっぱりこの人上手だなと思った。
京香も部長も小さい頃からサトとは違う絵画教室に通っている。
スケッチしている絵は、いつも上手だなと思っていたが、改めて絵具がのったものは迫力がある。
客観的に見て、自分の絵がどんな風に見えているのか恐ろしくなった。
絵を描き上げた時は、もう描けないからというだけでそのまま提出したのだ。
その絵が、良い仕上がりかどうかなんて判断できなかった。
絵画最後のフロアー壁に、『空っぽ』というタイトルの絵があった。
今までみた、色とりどりの絵から外れた気味の悪い絵が目の前にあった。
「サトくんの絵……迫力があるわね」
京香の言葉に部長も頷く。
僕は、見ていられなかった。
酷い絵だ。
汚い絵だ。
下を向いていたサトに、顧問が近づき声をかけてきた。
「平、お前の絵、だいぶ良い評価ついてるぞ。もしかしたら市内に飾られる一枚かもしれないな」
毎年、良い作品は、市内のどこかに飾られる。
ローカルの紙面や小冊子に掲載されることもある。
その言葉に、京香も部長も喜んでくれたが、サトは早くこの場から去りたかった。
サトの絵は、顧問の言葉通り、市内に飾られる一枚となった。
学校にもローカルのテレビ局が来て、取材を申し込まれるなど、サトは時の人となっていた。
今まで、サトのことを気持ち悪いと言っていたクラスの女子も「サト君て芸術家なのね」なんて心にもないことを言って話しかけてくる。
あの絵は、好きじゃない。
それでも、初めて他の人から絵を褒められたことが嬉しくて、心の中で浮足たっている自分が居た。
絵を描こう。
他の絵を。
そう思っていた。
でも、鉛筆が動かなかった。
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