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第23話

 季節は十月になった。  偶然、サトの母親と亮太がマンションの前で鉢合わせをし「今日は、栗ご飯だから、食べにいらっしゃい」と誘ったようで、一緒に帰ってきた。  サトが帰ってきたのは、その数分後で、亮太の姿を見るなり固まってしまった。  亮太はケガをしてから、サトの家には一度も来ていない。  学校では見ていたが、久しぶりに自分の家にいる亮太を見て、心が高揚した。 「ひ、久しぶり」 「おう」 「足、大丈夫?」  足首にはまだネット包帯が見えていた。 「ああ、うん。もう大丈夫だけど、捻挫はクセになるからな。ちゃんと治しておくように先輩からも監督からも言われた。」 「そうなんだね」  良かった。普通に話せる。  そう。友達。僕たちは幼馴染。  だから、このまま。このままでいいんだ。  彼女、元気? なんて話せたら一番いいのだろうけど、そういう軽口が出てこない。    亮太が、リビングのテーブルに置いてあった、ローカル新聞に目を留めた。  紙面には、サトの描いた絵が載っている。タイトル『空っぽ』。 「これ、俺見たよ。すごい迫力だと思った」 「え? 見たの?」  亮太は頷き、紙面を手に取った。  紙面に書かれている文字をみる。サトが写真と共に取材を受けた文章が載っていた。  ――夢中で描いて、気が付いたら出来上がっていました。…………このような良い評価をもらえて嬉しく思います――。 「俺は、この絵は好きじゃない」  小さく呟いた声と亮太のひどく寂し気な瞳が、僕の胸を貫いた。  亮太の色が、灰色に濁っていく。急に雨雲が覆いだしたように不安になる。  そういえば、最近の亮太の色は、濁って見えることが多くなった。  その後、夕飯を一緒に食べたが、全く味がしなかった。  亮太は、栗ご飯が美味しかったと、レシピを友達に教えたいからと母に聞いてメモを取っていた。  亮太が帰った後、「彼女かしら。知ってる?」とさっき聞いたレシピは、最近知り合った女の子に教えるんだそうよ。と教えてくれた。  心がチクチクと痛んでしょうがなかった。

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