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第25話

 サトは、幼馴染で、隣に住んでいて、ずっと近くにいて兄弟みたいに育った。  同じ部屋にいるのに趣味が違うからお互い別々の好きなことしてても、それが普通で。  居心地が良かった。  俺がサッカーのビデオをみたり、ゲームをしていて、隣ではサトが絵を描いたり、漫画を読んだりしていた。  ジュースあるよ。お菓子あるよ。テスト勉強してる。理科の先生がさ。駅前のパン屋にね。  そんな他愛もない会話をしていても楽しかった。  中学生の頃から、お互いつるむ友達は違うから距離はあったけど、家に行けばいつも通りの会話ができて嬉しかった。  高校生になって同じクラスになってから、サトが少しよそよそしくなったけど、家に行けばいつも通りだったし、こっそり見たスケッチブックには俺を描いていることを知っていた。  サトの家にいくたびに、いつも同じ場所にあるノートを見ていた。  ゲームをしている。目を瞑ってうたたねしている。ジュースを飲んでいる。笑っている。  全部俺だった。  美術部の上から見ていることも気付いていた。嫌な気はしなかった。むしろ嬉しかった。  最初は、揶揄うつもりで、絵のことは別の機会に言おうと思っていたのに。  ――あんなところを見てしまったから。    サトが脱衣場に飛び込んだ引き戸が数センチ開いていた。  自分のシャツを置き忘れたことを気付いて、すぐにドアを開けようとしたときに、俺のシャツを顔に埋めて、白い肌を赤くしているサトが見えた。  風呂なんて、随分と一緒に入っていない。だから、しばらく見ていなかった大人になった身体を凝視して、喉が鳴った。  妙な気持ちになった。 (なんだ? これは……。この気持ちは)  一度、リビングに戻り、サトの母からの「どうしたの?」という声にシャツを取りに行く用事を思い出す。  大きな声を出しながら脱衣所に近づいた。 『あれ、俺、シャツ置いてきちゃったかな』  ドキドキしながらドアを開ける。風呂場でシャワーを浴びているシルエットにまた妙な気持ちが湧き上がった。  ――どうかしている。  このモヤモヤした気持ちを払拭したくて、思わず絵が描かれたノートを見つけたふりをした。  揶揄うつもりでいたのに、真剣になってしまった。  まさか、AO1のキョウヤが出てくるとは思わなくて、ムッとしてしつこくしてしまった。  『似ているから好きなんだ』という言葉とサトの頬を染めた顔がずっと頭から離れなかった。    そこから、サトを意識していた。  友達、幼馴染、兄弟みたい育ったのに。  最初は、サトを見て、湧き起る衝動に戸惑った。  でも、これが恋愛感情なのだと知ったのは、あの花火大会の時だ。

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