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第27話
昔のことを思い出していたら、田中の想い人がやってきたようだ。
本屋の入り口に、漫画本を持ったまま、彼女の元へ駆け寄っていた。
サッカー部の先輩の同じ中学で、近くの女子高に通っている網代ユキ。
「ゆ、ゆきさん!」
田中のデカい声が店内に響いた。
「ゆきちゃんがいいな」
そう言ってクスクス笑っている。
「は、はい。じゃ、じゃあ行きましょう」
そのまま外に出ようとした田中を亮太が引き留めた。
「おい、漫画、戻しとけよ。万引きになるぞ」
「あ……」
漫画本を戻し、外へ出て行った。
田中とゆきちゃんが歩いている後ろを亮太が歩く。
「お昼、まだですよね? 何がいいですか?」
「うーん。どこかカフェとかどう?」
「カフェ……」
田中が固まってしまった。
そりゃそうだろう。男子高校生にカフェは、壁が高すぎる。
「亮太、どこか知らない?」
田中が泣きそうな顔で、振り向いてきた。
サトと入った店は教えたくなかった。
「ごめん。俺もわからない」
「ゆきちゃん、ごめん。俺、そういうのわからなくて……」
「大丈夫よ。私の知っている店でいい?」
そう言うと、大通り沿いにあるパンケーキのお店に着いた。
10人ほど並んでいる。
30分ほど待って、亮太たちも入れた。
店内は、女性だらけだった。
場違いな雰囲気の亮太と田中は、肩身を狭くして席に着く。
ゆきちゃんは、とても気さくで、1つ年上の余裕なのか、こっちの緊張をほぐすように話てくれた。
その後、買い物したいというゆきちゃんの希望で、洋服店や雑貨店に入る。
時間が経つにつれ、だいぶ打ち解けて、名前で呼び合うようになっていた。
スポーツ用品店で、田中が亮太へのお礼にとユニフォームのレプリカを買ってくれた。
そして、ゆきちゃんにはユニフォームを身に付けたクマのキーホルダーをプレゼントした。
夕方になるにつれて、浴衣姿の人たちが目に付いた。
花火大会の看板が目に留まる。
田中とゆきちゃんは、周りがみえていないくらい楽しく話している。
(もう、俺は帰っても良さそうだな)
二人に別れを告げて、家に帰った。
ユニフォームのレプリカを自分の部屋に吊るす。
さっき、帰り際に屋台が出ていたことを思い出し、サトと、おばさんと、俺の分の屋台メシを買いに出かけた。
小さい頃は、サトと祭りに行ったけど、今はどうしているだろう。
人混みが苦手だから行かないといってたき気がするな。
でも、屋台のメシは好きだったよな。確か、ソース系。
小さい頃は、1パックの焼きそばを二人顔を寄せ合って、フーフーしながら食べたな。
今は、流石にそれだけじゃ足りない。
屋台をはしごして、焼きそば、イカ焼き、たこ焼きを買った。
あたりが暗くなり始めた。急いで歩くサトのお母さんに会った。
「あら、亮太くん。今帰り? 実はね……」
ばあちゃんの具合が悪くなったと聞いた。
「今日、夜勤だったわよね? 夕飯、用意できなくてごめんなさいね」
と、話しながら、駐車場に停まっている車に乗り込んだ。
――サトは一人か。
ざわっとした気持ちが起こる中、マンション前にいるサトの姿を見つけた。
「出迎えご苦労」
こんな亭主関白的なことを言うはずじゃなかったのに、サトの姿を見とめたらテンションが上がっていた。
一緒に食べたかったなんて、大胆な発言をした。
それでも、自分自身の気持ちを確かめたかった。
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