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第33話 君はいつでも宝物をくれる

 ケガをしたあと、なんとなくサトに会いづらくなって、家に行ってない。  学校で会っても避けられている感じがした。  俺を見てくれなくなった。  絵を描いているようにも見えなかった。  何があったんだろう。  あの日。  風邪をひいた日。  熱のせいで、不機嫌になっているだけだと思っていたのに。 「亮太、ケガ大丈夫?」  前の席に座り、橋本が話しかけてくる。 「ああ。しばらく部活は休みだな」 「残念だったな……」  沈黙になる。  落ち込んでいるわけではない。試合に負けたのは悔しい。ケガをしたことも。  だけど、次に向けて前向きに考えられている。  部活も無理をしないで程度に参加している。  一番前の席で、顔を机に突っ伏して寝ているサトを見る。  溜息が漏れた。  「今日さ、俺とデートしない?」  橋本が、元気付けるように大きな声を出した。  ぴくりとサトの肩が揺れたような気がした。 「わかった。どうせ、どこか行きたいところあるんだろう」 「バレた」とおどけたあと、チャイムの音で、自分の席に戻って行った。  学校帰りに訪れたのは、市主催の美術展だった。 「俺の母ちゃんさ、陶芸教室通ってるわけ、でさ、見に行けってうるさくてさ。ささっと見るだけでいいから」  わりいな。と言ってスタスタと目的の場所に進む。  陶芸は、絵画の隣のフロアーだった。  絵画、最後のコーナーに『空っぽ』平 暁士と表札されている絵があった。  サトの絵は、沢山見てきたけど。これは、明らかに今までと違っていた。  顔半分は、ほとんど塗りつぶされていて、片目には、棘のある瞳が写っていた。  怖い。悲しい。寂しい。  そんな印象に思った。  これは、暁士なのか……?  絵の前に突っ立っていると、橋本がやってきた。 「平って、あの平? へぇーすごい迫力のある絵を描くんだな。俺は良く知らんけど、もっと優しい絵を描くような奴だと思っていたよ」  そうだよ。サトは優しい絵を描く。これは……この絵は、なんていうか、サトの絵じゃないようだ。それでも、きっとこれは、良い評価が得られるだろう。  俺も絵のことを知っているわけじゃない。  でも、この得たいの知れない迫力は、絵画としては凄いもののように思えた。  ――ただ、好きじゃない。  

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