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第34話

 10月、サトは時の人となっていた。  サトの絵が、市内に飾られる一枚となったからだ。  あまり、感情を表に出さないサトも、クラスメイトの言葉を素直に笑って喜んでいた。  つまらなかった。  その笑顔が、無性にムカついた。  なんでこんなに腹が立つのだろう。  サトの才能にイラついているのだろうか?  俺はケガをして試合にも負けたから?  そんなことを考えている自分がかっこ悪くて情けなくなる。  サトは、小さい頃から絵が好きだった。  夢中になると、他のことも俺のこともほったらかしで絵を描いていて、それが嫌で、サトを振り回していた。  ついてきてくれる心地よさが、優越感に浸れることが、なによりも嬉しかったのだ。  俺は、サトみたいに絵に対しての情熱がなかったから、この年齢まで続けていることに素直に尊敬していた。  今では、そう思えているけど、絵画教室を辞めるまでは、どこか恐ろしかった。  あの情熱や集中は、俺にはない。  彼の才能を妬んでいた。  同じ土俵に立つのを止めて、ようやく解放されたような気持ちもあった。  絵は好きだったけど、サトと比べられることが嫌だった。  俺は、サトから追いかけられたい。  彼がくれる羨望のような熱い眼差しは、俺が何をしても、ついてきてくれるという安心感があったからだ。  あの時、「試合は見に行かない」という言葉は、もう俺を見てくれないということを言っているようで目の前が真っ暗になった。 (――なんか、俺、ほんと、かっこ悪い)  

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