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第37話
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足のケガは良くなっていた。
今日は部活を休み、病院に来ていた。
たかが捻挫だが、クセになるケガだから、サッカーを続けたいならちゃんと治せと周りから言われていた。
総合病院の受付ロビーは、沢山の人が座って待っている。
その中に、5歳くらいの男の子が一人、つまらなさそうに座っていた。
手の指に包帯を巻いていた。
どこかから落ちた時とかに手をついたのかもしれない。頬にもかすり傷があった。
両親が離婚したのは、俺が4歳のときだ。
どういう経緯でそうなったのか知らないけど、父が出て行った。
父は、あまり家族に興味を持つ人じゃなかった。遊んでもらった記憶はない。
だから、居なくなってもあまり変わらなかったけど、母の仕事が忙しくなったことは嫌だった。
そして、サトが隣に引っ越してきた。
初めての挨拶は、いきなり伸ばしてきたサトの手が自分の頬に当たりバチっと静電気を起こした。
突然のことでびっくりしたのを覚えている。
サトの両親も働いていたから、二人で同じ保育園に通っていた。
彼のじっと見つめてくる視線に戸惑ったことは何回もあった。
それが嫌ではなかったけど、最初の頃は、仲は良くなかった。
保育園で亮太が跳び箱から落ちてケガをすることがあった。
跳び箱の上で、友達と遊んでいたのだ。
ふざけ合っていたはずが、いつのまにか押す力が強いとかで言い争いになって亮太が落ちた。
手から落ちたから、突き指程度で済んだ。顔にも少しかすり傷ができたくらいだ。
その跳び箱の上で遊んでいた友達が大泣きした。
落ちて痛いのは俺なのに、なんでお前が泣くんだよ。ってムカついた。
泣きたいのは俺なのに……。
そんで、お迎えの時に先生からその話を聞かされた母親が「泣かなかったの。偉かったね」と言った。
その日は、サトの親もお迎え時間が同じタイミングになったから、家まで一緒に帰ったんだ。
その帰り道、サトが泣き出した。
「りょうちゃんが泣いている。りょうちゃんの色が泣いている。僕も悲しい」
最初は意味がわからないし、気味が悪いと思ったけど、 後から親同士が話して、それを子供でもわかりやすく俺にも話してくれた。
サトが人の機微に敏感であることを知った。
色が見えると知ったのは、絵画教室で先生とサトが話している時に教えてもらった。
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