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第40話
窓ガラスがカタッと揺れる。外をみると、風が落ち葉を巻き上げていた。
「サト君の選ばれた絵『空っぽ』見た?」
その質問にただ頷いた。
「どう思った?」
外の渦巻く風が自分の心にも吹く。
なんて答えたらいいか迷う。
しばらく沈黙のまま、小百合は回答を待ってくれている。
「好きじゃない……です」
それだけを言うのが精一杯だった。
「私も最初見た時、驚いた。サト君自身も戸惑ているみたい……。彼、絵が描けなくなっているの」
「――――」
衝撃だった。
学校で描いている姿を見ていなかったけど、まさか描けなくなっているなんて思いもしなかった。
「でも、本人は描きたいと思っているのよ。ただ……気持ちと行動が伴わなくなっているみたい」
声が出なかった。
サトが絵を描けなくなるなんてことあり得ない。
「俺があの絵を好きじゃないって言ったから? そうなのかな?」
小百合は首ふった。
「違うと思う。何か彼にとってショックなことがあったのだと思う。だけど、それを乗り越えようとしている。私は見守るしかないと思っているわ」
「……」
「私には話してくれなかったから、亮太くんになら、話してくれるかしらね」
小百合は寂しそうに視線を落とした。
ショックなことってなんだよ。
なにがあったんだ。
俺が聞いて、答えてくれるのか?
ふと、サトの寂しげな空っぽの瞳を思い出した。
見つめて欲しいと願っているのに、あの瞳には何もうつっていないのかもしれない。
家に帰って、部屋のクローゼット奥にしまい込んだ、絵画教室の思い出を引っ張り出した。
――嫌なことを思い出させる。
確認してみたくなった。俺の絵を。
アルバムや、アルバムに入りきれていない写真に混じって、スケッチブックが出てきた。
そこに、絵画教室最終日に描いたサトの肖像画が挟まっている。
すごく下手で、笑えるが、その絵の瞳は、どこかで見たことがあるものだった。
寂しい、怒り、悲しみ……。
(そうだ思い出した。この絵は、サトの目に映る自分自身を描いたものだ)
彼みたく上手に描けない。かっこ悪い。誰にも見られたくない。
確か、そんな風に書いた気がする。
――嫉妬?
リビングに行って、市から配布されている小冊子を手に取る。
確かサトの絵が載っていたはず。
『空っぽ』それと、自分が書いた絵を見比べた。
似ているとかじゃない。似ているわけない。サトの絵の方が上手だ。当たり前だ。
でも、このうつろな瞳は、同じ感情だったのではないかと思えてならなかった。
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