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第41話

 玄関が開いて、買い物袋をぶら下げた母親が、「ただいま」と入ってくる。  今日は、夜勤ではない。  小冊子の絵とスケッチブックを持っている息子を見て、「なにしてんの?」と声をかける。  母親は、スケッチブックを見て、懐かし気に話してきた。 「そういえば、昔はサト君とあんたはよく互いを描いてたわね。サト君のスケッチブック、うちに残ってんじゃない? 今度返してあげなさいよ。あんた、自分の絵だからって返さなかったでしょ」  ……そうだっけ?  部屋に戻って、足元にあるスケッチブックを見る。  ――たいらさとし――と書かれているのが何冊もあった。  その場にしゃがみ込み、それを手に取りめくった。    向かい合って描いたであろう亮太の絵があった。  次のページにも。その次のページにも。  段々、亮太が真正面を見ていない絵も増えてくる。  走っている。食べている。遊んでいる。泣いている。笑っている。  グラウンドでサッカーをしている絵も出てきた。  家の近くには、公園兼多目的グラウンドがあって、小学生の頃はそこでサッカーをしていた。  最近は、そのグラウンドに行ってないけど、おそらくこの絵はその頃のものだろう。  大きくなって、このグラウンドで遊ばなくなったけど、それ以外でもサトは亮太を描いていた。  もちろん最近の絵も……。  ソファでくつろいでいる横顔。ゲームをしている姿。サッカーボールと戯れていている……俺。  ――――――!。  全部、俺の絵。  サトは、小さい頃から変わらず俺を見ていた。  全身が、顔が沸騰するように熱い。  彼の想いが自分の手元に溢れていた。  こんなに沢山の宝物をくれていた。  こんなことに今更気づくなんて……。     「ちょっと走ってくる」  たまらなくなって、外に出た。足は、もう大丈夫だ。  軽くなら走れる。というか、居ても立っても居られない衝動に駆られていた。

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