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第42話 色
僕は相変わらず、絵を描けずにいた。
今日は、部活は休んで、画材店へ行く予定にしていた。
しかし、京香先輩に教室まで迎えに来られ、部室まで連れてこられた。
無理やり座らされて、目の前京香、横に部長が座る。
二人の色が濃くなっていく。
「何が合ったのよ。吐きなさい」
ドラマで見るような警察の取り調べのようである。
「なにがですか……?」
「絵、描いてないじゃない? 部活も休みがちだし。まさか、まさか……」
なにを言い出すのかドキドキする。
「美術部、辞めちゃわないよね?」
京香の目は真剣だ。
部長をチラリと見る。同じく真剣だった。
「辞めません」
それだけ言うと、ホッと息をついて、良かったーという声が上がった。
(なんなのだろう。部員一人いなくなったところで、大して変わらないだろうに……)
「俺はさ、平の絵好きなんだよ」
部長からの言葉にギョッとした。
「『空っぽ』もそうだけど、平の絵は、命が宿っている。スケッチした絵も、被写体が生き生きしている」
京香は、部長の言葉に腕を組んで頷いている。
「正直、俺は絵が上手い方だと思っていた。でも、美術部で京香や、平の絵を見た。おごっていた自分を恥じた」
「俺は絵が好きだ。だからこう切磋琢磨できる仲間が出来て嬉しい」
部長が、こんな熱い情熱を持っていたことに驚いた。
彼が持っている透明に近い白色は、赤色が帯びていて、かっこよかった。
本気で伝えてくれているとわかって嬉しくなった。
小さい頃から見える色のせいで、それをどう処理したら良いか悩んでいたこともあった。
小学生に上がる頃には、色の意味が分かってきて、それによって、人がどんな反応をもたらすのかも知った。
だから、人付き合いは苦手で、あまり人と関わり合いにならないほうがいいと思っていた。
それなのに、京香先輩や部長は、そんな僕に自分をぶつけてきてくれた。
なんだか、申し訳ない気持ちになった。
僕は、臆病で、逃げてばかりだ。
こんなに気持ちをぶつけてくれる人に対して、僕は、いつまでも僕を出せていない。
(なにか、なにか言わなきゃ……)
「僕も絵が好きです。ずっと描いていたい」
幼い子が、お菓子食べたいとか、遊びたいという感情と同じような素直な言葉が出た。
稚拙すぎて恥ずかしくなる。
顔を赤くしたサトに、二人の先輩は優しく微笑んでいてくれていた。
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