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第8話 消えた妻の代わりに
「ルシアナ……?」
「気づいたか、エリファレオ」
「気分はどう? エリファレオ兄さん」
私の顔を覗き込むようにしながら話し掛けた二人の男に、思わずビクリと身体を震わせる。
「なぜ、アダルバードとジェレミーがこちらに……?」
「はは、エリファレオ。敬称が抜けてるぞ」
「兄さん、ごめんね。これから絶対、幸せにするから」
「ルシアナはどちらへ?」
一番に妻の心配をした私に、二人は眉を顰めた。
「大丈夫だ、危害は加えていない」
「彼女なら、愛する平民女性と一緒にいるよ」
「え……?」
「エリファレオは、前も今も、本当に優秀だ。お前のお陰で、前はまだ出来上がっていなかった|コ《・》|レ《・》が、もう完成しているんだから」
「それは」
アダルバードが手にしていたのは、アカデミーで魔術具専攻だった私たちが制作していた、同性婚でも使用できる魔術具だ。
女性が使用すれば男性器が作られ、男性が使用すれば女性器が作られる。
乳房などの変化は起きずに上半身はそのままであるが、両性具有になるのだ。
気を付けなければならないのは、一度使ってしまえば元の性には戻れないこと。
また、使用者の性欲や感度が上がってしまう副作用があること。
だから、本人の意思確認を何度も慎重に行った上で、神殿の許可の下、その魔術具の使用が認められる。
試作段階では神殿が許可する代わりに、何があっても責任を問わない、という誓約書を書いてもらっていたのだが。
「なぜそれが、ここに」
「そりゃ、僕たちには必要だからさ。それで、体調に変わりない? 兄さん」
「どういう……」
嫌な予感がして、私は下半身を見た。
膝下までの長さがある寝間着を着ていて、見えない。
なのに、二人がここにいて、魔術具がここにあるというだけで、私の背中に冷や汗が流れた。
「エリファレオ、回帰前は悪かった。ジェレミーと俺は反省して、今回はきちんと、二人でお前を愛することにしたんだ」
「ほら、兄さんが最後までこだわっていたのって、王子の時も僕の時も、血筋のことだったでしょう? だからこれなら、兄さんも文句ないかなと思って」
「な、何を……」
私の身体の右側にアダルバードが座り、寝間着の裾からそのごつごつとした手を差し入れて太腿を撫でた。
左側にはジェレミーが座り、寝間着の上から平たい胸を撫でた。
ぞわ、と変な痺れが身体に走る。
「俺の子を孕んだら、王家で育てる。ジェレミーの子を孕んだら、公爵家で育てる。これで問題ないだろう?」
「ふふ、今から楽しみだなぁ。兄さんの子どもなら、男でも女でも絶対に美人だもんね」
二人のやろうとしていることが理解できてしまって、ざぁ、と血の気が引いた気がした。
「ジェレミー、お前は異母弟なんだぞ。大罪になる」
「大丈夫だよ。僕は公爵家に実子としてではなく、養子として戸籍を入れているから」
そうじゃなきゃ、兄さんを手に入れられなくなっちゃうからね。
にこ、と微笑むジェレミーの言葉に、ガン、と頭を殴られた気がした。
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