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第9話 そして、囚われる *

回帰後にジェレミーが引き取られたのは、六歳だ。 なのに、養子として戸籍を入れるよう立ち回るなんてこと、できるわけがない。 考えられることは、ただ一つだ。 「まさか二人とも、回帰前の記憶が……」 そうでなければ、色々と説明がつかない。 徹底して冷たく接した私に二人が執着する理由も、何もかも。 二人は悪戯がバレた子どものように、笑う。 「うん、あるよ。回帰後の兄さんの行動を見て、僕もアダルバードも凄く反省したんだ」 ちゅ、とジェレミーが昔のように、私の頬にキスをした。 「誰にでも好かれる八方美人だった頃のお前より、今のほうが自由で生き生きとしていていいと思うぞ」 アダルバードは私の首に、舌を這わせた。 「もう、お前を誰にも奪われずにすむ。ジェレミーと俺だけの、エリファレオだ」 そう言われてふと、ある考えが頭をよぎる。 「まさか、回帰前に私の縁談がまとまらなかったのは……」 「ああ、俺が手を回していた。とはいえ、相手の男遊びの激しさとか家門の脱税行為とか、多少の情報を表に出しただけだぞ? まあ、全ての人間が清廉潔白な貴族なんてありはしないだけだ」 悪びれることなく言うアダルバードに、私は唇を噛んだ。 あの噂のせいで、多少なりとも病んだのに。 「あんな奴らに大事な兄さんを奪われるなんて、今考えても腹が立つ。まあ、アダルバード相手でも嫌だったけど」 「それはこっちだって同じだ。いや、同じだった」 回帰後はずいぶんと仲良く見えた二人だったが、私のことが絡むと違うようだ。 しかし死ぬようなレベルだった喧嘩が口喧嘩で終わるのだから、二人とも成長したものだ。 「回帰前は魔道具が完成していなかったから両親の反対にあって大変だったが、今回は大丈夫だ。魔道具の作成指示もずっと早く出せたし、何よりお前が頑張ってくれたから」 「勝手にごめんね、兄さん。でも僕たち、回帰前も回帰後もずっとお預け食らってて、本当に限界なんだ」 二人の指先や舌が私の身体を這い回り、ゾクゾクとした感覚に襲われる。 ああ、この慣れない感覚は……快感だ。 「この魔道具は、一度使ったら、二度と元の、姿に、は戻れないのに……っっ、ぁ、はぁ……っ」 自分が使う予定は一切なかった魔道具の副作用。 身体を支配する快感に翻弄されて、まともに話せない。 「もちろん、わかってるよ。僕たちで兄さんを幸せにするから」 「ああ、これからは俺たちと美味いもん食べて、セックスして、子供を孕んで、好きなだけ魔道具の研究を続ければいい」 「んぁ、はぁ、ぁん……っ」 二人が死ぬこともなく、世継ぎの問題もなく、ずっと私の傍にいてくれるのなら。 全身を覆う痺れが脳にまで侵食して、それも悪くはない、とすら思ってしまう。 「兄さん、これだけで気持ちイイの? 勃ってるよ」 「もっと気持ち良くさせてやるからな」 「んん……っ♡」 もっと触れて欲しくて、堪らない。 勃ちあがった下半身の先端から、トロリ、と情欲が溢れたのを感じる。 「好きだよ、兄さん」 「俺たちの、エリファレオ」 私の大切な人たちが、その瞳に情欲を湛えてこちらを見る。 ああ、求められている。 ならば私は臣下として、兄として、応えるべきだ。 ――私はこうして、二人に囚われた。

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