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第2話⭐︎

* * * 彼と僕は、交わることのない運命だった。 彼は、学校一の有名人。 すらりとした長身に、 彫刻のように小さく整った顔立ち。 その気品漂う佇まいから 女子達に陰では「貴公子」と呼ばれていた。 成績は常に上位 運動神経も抜群 何もかも完璧な彼の周りには、 いつも人だかりができていた。 かたや僕は 可もなく不可もなく 突出して何も特徴はない 教室の隅で決まった友人達と静かに過ごしているようなタイプ それでも、内向的でマイペースな僕にとって 平穏な日常に満足していた。 彼とは同じ学年ではあったが、 クラスも校舎も違う。 この先、彼と話す機会があるなるなんて、 思ってもいなかった。 最初は、ただの偶然だった。 放課後、図書委員の当番で カウンターにいると、彼が本を借りにきた。 初めて間近で見る彼は、 紗がかかったような どこか現実離れした美しさを放っていた。 『この人、実在するんだ』 それが出会った時の 僕の率直な感想だった。 それからーー 彼は、放課後の図書室に短い時間だけれど来るようになった。 いつも窓際の決まった席に座る。 手元には本が開かれているのに、 ほとんど目を向けず、 何やら外を眺めている。 時々、くすっと微笑みながら。 最初は気にしていなかった。 けれど、ある日。 窓の外に視線を向けると、校庭ではラグビー部が練習していた。 彼は、今日もその練習を眺めている。 それも、愛おしそうに。 ――もしかして、 彼は恋をしている? そんな予感がした。 彼には、好きな人がいるんだ。 しかも、ラグビー部の誰かに。 ということは 「……男が好きなのか?」 自分でも自然に口にして出していた言葉に しまった、と慌てて口を覆う。 言葉はすでに彼に届いてしまったようで 窓から視線を外して ゆっくりと正面を向いた。 鋭い瞳で僕を捉える。 「どうして、そう思う?」 低く落ち着いた声。 「……あまりに熱い眼差しで、ラグビー部を見つめていたからつい…」 言い終わった瞬間、猛烈に後悔した。 「……ごめん。勝手な詮索だった」 僕は視線を落とすと、 少し迷ったあと彼に近寄りそっと耳元で囁く。 「実は、僕、男が好きなんだ。 だから茶化すつもりじゃない」 「君、男が好きなのか?」 驚くように彼は僕に尋ねる。 「まぁ…」 「どんな奴が好みだ?」 「えっ? どうしてそんなことを聞くんだ?」 動揺を隠せない僕に 彼は答える。 「俺は自認したのが最近なんだ。 一目惚れした相手が偶然男だった。 参考にしたい。 君なら、こんな男は嫌いか?」 腕を掴まれ、切実そうな大きな瞳で見つめられる。 突然そんなことを聞かれ、僕は戸惑った。 「いや……」 目の前の彼を見つめる。 「あなたみたいな素敵な人、男でも嫌いになるほうが珍しいんじゃない?」 「そうか」 彼は、安堵したように 眩しい笑顔でにっこり笑った。

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