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第5話
「もー!最悪ー!」
乱れた髪を指で梳かし、タバコに火をつける彼女は、今日も今日とてやさぐれている。身体中に出来た痣は乱暴な客を相手にしたからだ。
「あいつ出禁に出来ないの?」
「そうは言っても…お得意様だろうから…」
散乱した汚物を片付けている男にそのような事が出来るとは誰も思っていない。彼はただのフロア清掃員なのだから。サッと汚いベッドのシーツを引き剥がし、清潔なものへと交換する。
「アイツらあたし達が王国民だからって何でもしていいと思ってるクズよ。ほんと大っ嫌い!」
それにうんうんと頷いた男はそのシワだらけのシーツを片手に彼女達の不平不満を聞いてやる。少しでも心が軽くなるならば同胞としてやれる事をしたい、というのが男の考えだ。
「…後で何か冷やせるものを持ってくるよ。隣の部屋片付けてくる」
その為にはまずこの臭うシーツを洗濯室へ持っていかなければと彼は扉に手をかけた。
がちゃりと開いた扉の先、待っていたのは見慣れぬ男達が向ける銃口だ。
「―…え?」
ずるりとシーツが腕から滑り落ち、容赦なく浴びせられる鉛玉に抵抗する余地などない。どすんと倒れ込んだ男の目の前には薬莢がカラカラと音を立てて落ちてくる。
「い、いや!!な、!?…な、何なのアンタ達!」
悲鳴を上げ逃げ惑う彼女の背中に何度も何度も発砲する男達は人を殺すことに抵抗がない。
「こいつらだけか?貰ったデータは四人になってるが」
「ああ。残りの二人はお休みだってよ。ま、他の連中が殺るだろうよ」
そのうちの一人は転がった死体にペッ、と唾を吐きかけ「王国民の分際で」と腹を蹴り上げる。シーツに滲んだ血液がその面積を拡大していくのだ。その行動を咎めるものはここにはいない。
「この死体はどうしろって?」
「ここの社長さんが処分するから問題ねぇってよ」
「ひでぇ社長だな。…まあ王国民はどこに行っても邪魔者だってことだわな」
その痛みで気を失ったのではない。あまりに酷い彼らの言い草に気を失ったのだ。
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