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第14話

 白い空間の中、小さな黒い影達がその少年を囲んでクスクスと笑っている。   『喋り方変だよね』と彼らは思ったことを言っているだけだ。それに言い返せば彼らはまた『変だ』と笑う。    今にも泣きそうで、可哀想な少年をノエルはただ遠くから見ているだけだ。    何故彼らに従って自分を無理矢理変えなくてはいけないのか!と少年は叫んだ。怒りに震える一方で深く傷ついた心は誰にも解放することなく一人で抱えられていることをノエルはよく知っている。   『…出来損ないが。やはり王国の血が混ざっている』    少年を見下ろした藍色の瞳は、追い打ちをかけるようにそう言った。ノエルと同じくらいの背丈の男はその少年が差し伸べた手を振り払い、気に止めることなく消滅する。    少年を助けず傷つけるだけ傷つけて、ある一瞬で散って消滅する。そうすればなんの声も聞こえない無音に取り残されるのだ。   『どうしてみんないなくなるの』と膝を抱えて悲しむ彼に、「お前に必要がないからだ」と教えてやる。だがこちらの姿など見えていないのだろう。ただ孤独に涙を零すのだ。    惨めで、弱い、その少年をノエルは見て見ぬ振りをして黒い影と同じように背を向ける。  しばらく白い空間を彷徨い歩くと、ボロボロのよく見知った扉が目の前に現れた。   その扉を開けて一歩中に踏み入ると、急に目線が低くなる。あの泣いていた少年に逆戻りしてしまうのだ。   『ノエル、おかえり』    窓辺にいつも番の鳥が遊びに来ていた。暖かな日差しはベッドで横たわる母を優しく照らしているが、その世界は優しくは無い。   『学校楽しかった?』と掠れた声で問いかける彼女に、ノエルは(楽しくなんてなかった)といつも言えず、ただ頷くだけだ。    沢山の管に繋がれたその腕をこちらに差し伸べて、優しく笑う。ノエルはその手のひらをぎゅっと握った。まだ暖かく、その夢の中では彼女は生きている。目が覚めたなら、全て無かったことになる温もりが恋しい。   『ごめんね、あなたには辛い思いをさせるけれど』    その笑顔は頼りなく、抱きしめられたノエルはただ(目が覚めなければいいのに)と願うばかりであった。            

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