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第18話

 そこに座る中年の男は、ちんまりと椅子に腰掛けキョロキョロと視線を動かした。外を出歩けば彼のような人間はごまんといるだろう。   『えー、…ベン・カインさん、あなたは警察官二人と、デリカロッドの社長であるドミニク・モナとそこで働く従業員を殺害した、間違いありませんか?』    捜査官に促され、男は頷くと説明を始める。それをローレンとケイシーは鏡越しに観察するのだ。   『…はい。間違いありません。』 『何故殺害したのですか?』 『私は王打会の人間に脅されて…』 『もっと詳しく話してください。』 『警察官の方は、王打会の事を嗅ぎ回っていたからと聞いています。…デリカロッドに関しましてはみかじめ料の未納でトラブルになっていまして…』    へこへこと頭を下げながら男は丁寧な口調で対応する。今までに見てきた王国打倒委員会の人間とは思えない新しいタイプだ。それは隣で歯ぎしりをするケイシーも、腕組みをして仁王立ちするローレンもそう思っている。   『では、どうやって彼らを殺害したのですか。』 『薬です。…中身は分からないけれど、王打会からその薬で殺すよう言われました。』 『薬とは?飲ませたのですか?それとも注射?』 『警察官に関しましては…マーリンという酒場の酒に貰った錠剤を砕いて混ぜました。デリカロッドでは、注射器を預かりましたのでそちらを…他の方々は銃で…』   この男が犯人で間違いは無いはずだ。何せ捜査部隊員の殺人は外部に漏れぬよう情報を制限している。…しかし、それを聞いている二人はどうにも腑に落ちない。 『―凶器は全て処分するよう指示されました。今頃ゴミ処理場で粉々になっていると思います』 『自首しようと思ったきっかけは何でしょう』 『王打会は私を切り捨てました。…殺される前に全てぶちまけてやろうと…。』        「おい、どう思う?」とケイシーはちらりと視線をローレンに向けた。その違和感を共有したいと思ったのだ。   「そうね、…彼が恐らく犯人なのだろうけど…まだ決まった訳では無い。」    その回答に、彼は片眉を上げて再び鏡の向こう側に視線を戻した。怒りも憎しみも今は落ち着いて、冷静に犯人の男を観察している。   「人間がブヨブヨになって死ぬ薬なんてあると思うか?」 「…分からない。王打会は最近勢力を増している。化学兵器を開発していないとも言えないわ。」  「化学兵器ねぇ、…不死身の男といい、分からねぇ事ばっかりだ」 「科学班のDNA鑑定を待ちましょう。…話はそれから」 ローレンはくるりと踵を返し、カツカツとヒールを鳴らしながら退室した。ケイシーはまだじっと観察を続けるつもりである。   (…きな臭い。何者かに覗かれているような…"不死身の男"の都合の良いように……いや、勘違いか)    彼女はその唇をガリっと噛み、言い知れぬ不安を抱きながら書類を作成するためオフィスに戻ることにした。        

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