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第37話

 様々な薬品は殆どが実験のために集められた。数十個のアクリルのケースには、白いネズミがちょこまかと動いている。薄暗い照明の元、全身防護服にマスク、飛沫が飛ばぬようゴーグルも着用して男はせっせと採取した赤黒い液体を注射器で吸い取った。ラベルには『二人目』と書かれている。   「はてさて、…どうなるかな」   彼はデータベースのモニターを空間に表示させて、それぞれのケースごとにストップウォッチを設定する。それは強弱を図るために必要なことだ。      右から順番にネズミにそれを注射すると同時にそれぞれの時計が時を刻み始める。…変化は直ぐに現れた。悶え苦しむ暇もなく右端からブクブクと膨れ上がるネズミは、紛れもなくその液体のせいで死んだのだ。   「素晴らしい、それに膨張化まで平均1.75秒、…これは新たな逸材だ」    男はゴーグルの中の瞳をキラキラと輝かせる。楽しくて楽しくてしょうがないのだ。  慎重に残った注射器の液体をバイアル瓶に慎重に注ぎ、密封させる。そして油性のマーカーで『二人目』と書くと、厳重なロックがかかっている保管庫に入れた。   『非通知番号から連絡があります。応答しますか?』と音声アシストが男に告げる。非通知でかけるのは一人しかいない。ちょうどいい、こちらも連絡を取りたかったのだ。   「はいはい、こちらD(ディン)、どちら様かな」 『…私だ。』 「グットタイミング、ちょうど色々とあってねぇ。彼、目が覚めたよ。経過は良好、意識もはっきりしているしなんの問題もないよ」    少しの沈黙の後、『…そうか、生き延びたのか…』と弱々しい声は、男の高いテンションとは対極だ。何をそんなに落ち込むことがあるのか全く理解できない。助けたかった男は助かったでは無いか。   「それとねぇ、今実験してたんだけど素晴らしい数値を叩き出したよ。ほんの一部だけなのに。」 『…あいつは大丈夫なのだろうか?…その、異変に気がついたりとかは…』 「そのうち気がついてしまう事だろうけど、今は特に何も説明していないよ。」 『…わかった、お前からは余計な事は言わないでくれ。…私がそのうち話す』 「OK、だが定期的に検査させてもらうからね。じゃあまた」  通話を終了させて、死んだネズミをダストボックスにドボドボと捨てながら、男は上機嫌に鼻歌を歌った。    

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