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第50話

 その掲示板を見つけたのは、帰りのスキープカーの中でだ。   『俺が所属している某打倒○員会の暴露する』という題名に惹かれ開いてみると、ノエルにとって心当たりのある内容が投稿されていた。    どうやらスレッド主は悪魔の餌やり係になったようで、そのことについて書いている。その内容に書き込んでいる人間の殆どは信じていないが、ノエルはそれが本当だと確信していた。    それは一枚の写真に写った王国打倒委員会のポスターにヒントがあった。発行年月日が二十七年の十一月八日となっている。ネットの海の中を探していると、同じポスターが分布していたのはエレモアシティー南区周辺だった事が分かった。どうやら当時細々と活動していた王国打倒委員会は区ごと、街ごとにポスターを作り直していたようだ。   (……やはり腕時計が最後に示した場所にウィルソンはいる可能性がある)    自宅には帰らずノエルは南区の手前で下車した。そして男を救出するためガンショップに立ち寄り、使えそうなものを揃え万全の体制を整えた。そこで無人タクシーを拾い、ノエルは位置情報が指した『ミナミ縫製工場』に目的地を設定する。     『目的地まで残り十五分です。』   ノエルはデータベースを開き、再びあの掲示板を覗く。何か新たな情報が得られるかもしれない。   『アイツら酒とク○リで眠ってるからもう一度地下室行ってみるわ』    その書き込みは三分ほど前のものだ。つまり救出するなら今がチャンスという事だ。   『何か聞いて欲しいこととかあったら書いて』とあったのでノエルはその掲示板に参加することにした。   『他の仲間にバレないのか』と不慣れながらもノエルは書き込む。すると直ぐに返信があった。    >>257 心配だったからアイツらがいる部屋の扉閉じたった  ちなみに悪魔に毛布と砂糖レモンジュース渡す予定。なんか可哀想なんだよなぁ寒いし…   (…くそ、まだ着かないのか)    今なら一人でもどうにかなりそうだ。しかし気がかりは不死身の男を拘束しているにも関わらず杜撰すぎるという点だ。ノエルはそのことについて顔の見えない主に聞いてみることにした。    悪魔を拘束している割には下っ端に鍵を渡したりするのか?    そう書き込んで五分、なんの反応も見せない。もちろん他のコメントにもスレ主は返事を書かなかった。地下室に下りたのだろう。    もうすぐ到着、ノエルはふと視線を窓の方へ向ける。縫製工場の赤い看板が小さく見えてきた。そして見覚えのある後ろ姿もだ。   「―ッ!………」   思わず二度見したのは、ヒラキ・ライトが挙動不審にキョロキョロと首を動かしながら歩いていたからだ。  ノエルは無人タクシーのメーターを切ると荷物を抱えて下車した。そして駆け足でその男の肩をガっと掴む。   「何してる!」 「わぁ!!……あ、あなたでしたか…」    彼は何かをサッと抱え隠す。ノエルはその腕をべりっと剥がすと、年季の入ったアサルトライフルが現れた。片眉を上げたノエルに彼は気まずそうに視線を逸らす。   「そんなものを持ってどうするつもりだ」 「…あはは、えっと…ウィリアムを助けに…。イロメキ劇場の…拉致されたのアイツなんですよね?」    一般公開されている情報は個人を特定出来るものでは無い。   「…何故そう思う?」 「…えっと、実は事件の前日、一緒に見に行こうって誘われていたんです。…断ったらあいつは一人で行くって…」 「なるほどな。だからといってどうしてここにいる」    ノエルは誘われなかった、その事実はとてつもなく不愉快だ。頬がピクピクと突っ張って、酷い表情をしている事だろう。ウィルソンの優先順位の第一位はヒラキ・ライトだということを突きつけられたのだから当たり前だ。   (何故こんなどこにでも落ちていそうな石ころが…)   「掲示板…見たんです。色々聞いてみたら本当かもって思って…調べたら南区周辺が怪しいと思ったんですよ。あなたがいるということはやはり…」  ヒラキは拳銃を抱える腕がぶるぶる震えている。ウィルソンの事が心配で来たはいいものの過激派組織に乗り込む事に恐怖を感じているのだろう。   「なるほどな。だが貴方は帰るんだ。」 「…えっと俺は帰るつもりないです…。」 「一般人が首を突っ込んでいい案件じゃない。相手は過激派組織だ。下手すると死ぬ」 「…すみません、そうですよね……」    彼は理解してくれた、そう思ったが続けて「でもそれは出来ません」と震える声で言った。何を言っても意志を曲げるつもりは無い。   「ハッキリ言うがお前がいると邪魔だ」 「…分かってます。だけど俺は帰りません。」 「……言い争う時間が惜しい、俺は貴方を守らないからな」    ノエルはそう吐き捨ててミナミ縫製工場の入口へと向かった。その後ろを何かに怯えながらヒラキも追いかける。    

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