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第51話
「毛布、持ってきましたよ…」
扉の向こうにそう話しかけると、男が部屋の端からこちらにやってくる気配がする。
「…ほんとうに?ありがとう!」と眠っていたのか少し掠れた声。赤毛 は早速その小さな投入口に毛布を押し込んでみる。
「…クソ、どうやって入れようかな…」
薄手のものならどうにか入れられただろう、しかしここにあるのはモコモコと膨らんだ毛布しかない。その投入口に詰め込むが、何かがつっかえて途中で入らなくなってしまう。
彼は一度毛布を引き抜いて、今度はペットボトルを投入口に押し込み始めるが、それも通過できない。
「すみません、…どれもこれも入らないみたいだ…」
期待させるだけさせてこのザマだ。その隔たりの先、男は絶望したように「そんな…!…せっかく暖かくして寝られると思ったのに…体の震えが止まらないんだ」と訴えかける。
「ど、どうしよう、今から買いに行けばもしかしたらアイツらが起きちゃうかもしれないし…」
「どうにかして毛布を私に渡せないか?」
赤毛 のあたふたと回らない思考を男は狙っていたのだ。
「じっとしているから、扉を開けて渡して欲しい」と。
「え、いやそれは…」
「私は部屋の端に戻る、お前は扉を開けて毛布を放り込んで直ぐに閉めればいい。…ほら、向こうに行くから」
男の声が少し遠くなる。足音も確かに向こうへ行ったはずだ。「…まだ?」と急かされると気の弱い赤毛 は思わず扉のロックを解除するスリットにカードを通した。
ゆっくりその鉄扉を引く。
ギギギッと嫌な音が聞こえたその時。
バンッ!と勢い良く向こうから扉が押され、赤毛 は持っていた毛布に足が絡まって転倒した。
(や、やばい)と思った時には後の祭りだ。
見下ろす悪魔の瞳と目が合った。それはおぞましいほど美しく、凶暴な眼差しでこちらを見下ろしている。握られた拳には血管が浮き出て、もやしのように細い赤毛 は体格差が圧倒的だ。
本能的に体が逃げようと行動する。絡まった毛布を蹴って、後ろへ尻を擦りながら後退すると壁にぶつかった。
逃げ場がない、絶望を浮かべた彼に悪魔は「悪く思うなよ」と拳を振り上げた。
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