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第54話

 地面に落下した袋から転がった缶ビールは無惨にもベコベコになって中身が吹き出した。   「……やられた」    その少女は冷静にそう呟いた。部屋中血みどろでブヨブヨの物体が転がっている。そして酷い悪臭は、その肉が腐り始めている証拠だ。彼女の後からやってきた青年もまた同じ反応だ。   「うわぁ、ひでぇなこりゃ。…レア、どうするよ…。地下室の扉開いてた」 「…困った、明日だよね?」 「ああ。例の役人が悪魔を迎えに来るらしい」 「…はあ、一体どうやって外に出たんだろ」    二人はその部屋の中を歩いて周り、一つのぶよぶよの死体にカードキーが突き刺さっていることに気がついた。   「スカンク、カードが刺さってる。抜いて」 「うぇ…俺がかよ…」    ずぬぬ、とそれを引き抜くと黄色い汁が吹き出してくる。キッチンで水洗いすべく、親指と人差し指でつまんで持っていく。   「みんなやってる〜?」と軽い口調でサロメがやってきた。そして劈くような悲鳴を上げると、高いヒールで脚を挫いたのかひっくり返った。固定してあった鼻のギプスは角にぶつけてグニャリと曲がる。   「な、なによこれぇ!!」 「見ての通り、悪魔がやったんでしょう」 「え!?閉じ込めてたんじゃないの?明日でしょ?どーすんの!?ヤバくない?」   ギャーギャーうるさいサロメに彼女は頭を抱える。どうすべきかまだ考えがまとまっていないのだ。   (聖女様はとても大切な取引だと仰っていた。…悪魔が逃げたとなれば王国打倒委員会だけでなく聖女様の信用も無くなる…それは避けなければ…)   「聖女様に正直に話す?悪魔が逃げたーって」 「馬鹿言え!んな事したらどうなるかわかんねぇのか!」 「じゃぁどぉすんの?」    言い争う二人に彼女が告げたのは「死体を処分しよう」という提案だ。   「隠蔽するってことか?でも明日には―」  「代理を立てるのよ。…聖女様は明日は帝都に出向いているはずだから、迎えは役人一人で来るはず。向こうは誰が悪魔だか分からない」 「なるほど!…でも上手くいくんだろうか」 「さあね…。後のことは考えたくもない。」 「でぇ?誰がだいり役するの?」    地下室から上ってくる足音が聞こえる。フラフラと、体を引き摺るように。    三人の視線はその赤毛へと注がれる。   「オタク君の使い道ができたね」  

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