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第55話

 ぴくりとその指先に感覚が戻る。激痛が体を駆け巡って一瞬何が起こったのか分からなかったが、彼女は自分が酷い拷問を受けたことを思い出す。   (…ここは…?えっと…何してたんだっけ)    徐々に脳みそが働き始めて、ミランダ・モスカは目を覚ました。   「……!ミランダ!良かった、良かった…」    聞き慣れたその声はとても安心する。瞼を開けたが、視野がやけに狭い。だがその親友の顔を見ることが出来ただけ良かったのだろう。   「…あたし、生きてるんだ…。ローレン、ずっと居てくれたの?」 「当たり前でしょう!」    ローレン・クロウリーはその瞳を安堵の涙で濡らす。本当は抱き締めたかったが、ボロボロの体に躊躇った。包帯でグルグル巻の手のひらをギュッと握る。   (課長がクロウリーを指名しなかったのはこういうことか)    ケイシー・ケンドルは部屋の隅で黙って彼女らの再会を見守っていた。病室から出た方がいいだろうが、外には陸軍関係者がわらわら見張るようにいる。   「あたしは…どうして助かったんだ」 「…こちらで拘束していたサロメ・バーンと交換したのよ」 「…あの市長の娘か?クソ、…超重要人物じゃないか…。あたしがヘマしたせいで…」 「あなたは悪くない。元々上から圧力がかかっていたと聞いた」    二人は同じ孤児院で育った。戦後の混乱が尾を引く中、お互いを支え合い困難を乗り越えたのだ。  親友、…家族に近いのかもしれない。同じ戦争孤児だったケイシーにとっては羨ましい存在だ。唯一無二の理解者というのは。     「…そういえば、あたし以外にもう一人保護されなかった?」    彼女の言葉にローレンは男に目線を向ける。もちろん保護されたのはミランダ・モスカだけなのでケイシーは首を横に振った。   「…いいえ。まだ誰かいるの?」 「ああ、あたしと同じ部屋にぶち込まれてた男だ。…一緒に逃げようって言ってたが…」 「どんな男?」 「顔は目が見えていなかったから分からん。拷問も拘束もされていなかったようだ。声からして二十代から三十代かな。やけに落ち着いていた」 「他には―」    ドンドンと乱暴に叩かれた扉、それは『面会は終わりだ』と言っている。   「…また見舞いに来るから、……ゆっくり休んで」と名残惜しいがローレンはそう別れの言葉を絞り出す。ケイシーは扉を開けて先にローレンを潜らせその後自分も退室した。      

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