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第58話

 インターホンを弱々しく押す。中途半端に途切れたベルはヒラキと同じように情けない。   『はい、どちら様?』 「あ、…俺ですけど……」 『ちょっとまってて』   その事実を伝えることはとても心苦しいものだ。彼女が一番その三人の事を気にかけ、探していたのだから。        ガチャっと空いた扉の先は相変わらずゴミ山だ。そこから現れたレミ・ゴールは誰か部屋にいるのか、後ろをチラチラ気にしている。   「すみません、急に押しかけて」 「いいってもんよ。中で話す?」 「いえ、……直ぐに終わるので」    ヒラキはポケットからそれを取り出した。心苦しく、息が詰まる。彼女の手のひらに乗せられたアクセサリーはキラリと光った。   「……これ…あの子たちの…」    お気に入りのアクセサリーというものは毎日顔を合わせていれば話題に上がることもあるだろう。ヒラキが当時気になっている女性へのアプローチを相談した時だったか。   (…そういえば、あの子どうしてるかな…)    可愛い笑顔を思い浮かべる天使のようなその人を思い浮かべている。細い声を聞きたい、その柔らかそうな手のひらを握りたい、あの男の目につかぬ所へ行って、なんの罪悪感も感じず人を好きになる。   「―ッ…」    目の奥をフォークで突き刺されたような鋭い痛みが走って、ヒラキは奥歯をグッと噛み締めた。   (…その為に絶交したのに…結局あいつの都合のいい人間に…)   「聞いてる?」 「…あ!すみません…」 「どこで見つけたの?」 「…えっと…知り合いの刑事さんがこっそり俺に渡してくれたんです」    王打会の拠点の一つに乗り込んだとは流石に言えず、ヒラキは嘘をついた。   「刑事?…それって…」 「……詳しくは言えないです」  「ねぇ、あの子たちはどこにいるの?…生きてるんだよね……?」     ヒラキは彼女の大きな不安と悲しみに飲み込まれそうだ。地面ごと揺さぶられ、恐ろしい暗闇が足元から這いずっている。そんな感覚がじわじわ自分に迫ってくるのだ。   「……俺にもわかりません。でも恐らく…」 「…そんな…」    涙を浮かべる彼女に、ヒラキはどうしていいのか分からない。慰める、とはどのようにしていたか。その涙が零れ落ちる度、頭痛が嫌に主張し始めた。ジクジク、時々ツキンと男の脳みそを攻撃している。   「レミちゃ〜ん!まだすか?」と彼女の後ろから頭を覗かせた若者は、アホそうな大学生だろう。こちらを見るなり疑うように眉を寄せる。   「あんた、なんでレミちゃん泣かせてるんすか!」 「いや、えっと…」 「なんとか言ったらどうすか!許さないっすよ!」    言われもない事でグッと胸ぐらを捕まれ、ヒラキは肩を強ばらせた。首がグラグラ揺れて頭痛が更に酷くなる。    「リク止めて!…さっき話してたあたしの知り合いだから」と直ぐにレミが止めに入ったが、安物のシャツは伸びてヨレヨレだ。   「…あ、もしかしてヒラキさん?」 「…はい、そうです。あの、俺もう帰ります。…」 「待って!あんたに詳しく聞きたいことがあるんすよ。」 「え?いやでも…」    男は「いーから!」とヒラキの腕を掴んでゴミ屋敷へ引きずりこんだ。    

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