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第66話

 本来ならその会話を誰が聞いているとも分からない場所ですべきでは無い。しかし安全な場所は何処へ行っても人がいる。    サコダはその日レミの部屋にやって来たヒラキ・ライトから直接行方不明になっていた三人の事を聞いた。彼女らがもう生きてはいないだろうと涙ながらに語る姿に心打たれたのだが、話しているうちに引っ掛かりを覚える。   「なんというか時系列が合わないんすよね」 「…というと?」 「だってあの人が撃たれて病院に搬送されたのはデリカロッドの事件の時でしょ?」    サコダの違和感はノエルにもあるものだ。彼は清掃中に何者かに銃撃を受けたと言った。王国民の娼婦はそこで息絶えたとも。   「そうだな。…記憶が曖昧だと思っていたが…」 「その可能性もあるっすけど、良く考えればなんでデリカロッドの社長達の遺体はそのままで、王国民の従業員の遺体だけ消息不明なんすか?」    サコダの言う通り、仮にデリカロッドの殺人と王国民の殺人が同時進行だった場合片方だけ遺体を残し、もう片方は無かったことにするのだろうか。   「確かにな。では違う日時にそれぞれ事件が起こった可能性を考えよう」  時系列を整理する必要がありそうだ。ノエルはデータベースを開き、アクセス権にサコダを追加しノートを共有した。   「えーっとまずはデリカロッドの事件すよね」    箇条書きにノートに情報を書き連ねていく。それらを一番しっくりくるように並べ替えなければならない。   『王国民の従業員クビ→デリカロッド事件→ヒラキ・ライト負傷+三人行方不明』、と書いていくうちに、喉の奥に小骨がつっかえて取れないような気持ち悪さが二人を襲った。   「なんかやっぱ変すよ。そもそも数日前からクビになってるのになんであの人はあの日あの場所にいたんすか?」 「そういえば『社長が死体を処分するから』と聞いたとも言っていたな…」 「あー、分かんなくなってきた。つまり三人は社長より先に殺されてるって事すよね」    ノエルは箇条書きの言葉を矛盾の無いように入れ替えてみる。   『ヒラキ・ライト負傷+三人行方不明→王国民の従業員クビ(隠蔽)→デリカロッド事件』という具合に。   「うーん、確かにスッキリしたような気はするけど…でもあの人は実際に撃たれて運ばれてるしなあ。それこそ"不死身の男"だったら分かるんだけど」 「………」    ノエルはその当時の事を思い出す。あの事件が起きたその後、ウィルソンがノエルの自宅で自殺していた。彼は痛みに耐えられず頭を撃ち抜いたのだとすると、犯人と鉢合わせして怪我をしたのか。それとも一連の事件を起こしたのはウィルソンという可能性が再び浮上した。 「まぁ、犯人は捕まってるから今更なんすけどね。ただやっぱ気になって…」 「ともかく今はゲートの解放を待つしかないだろうな。」 「そすね。一応ローレン部隊長にも報告しときたいけど、電波がないしなあ…あー、ダメだー!イライラすんな〜!現代っ子にネット環境取り上げるなんてみんな発狂するっすよ」    サコダは何度も何度もローレンにメッセージ送信を試みる。だが簡単に繋がれば苦労は無い。そのせいで外部と連絡が取れず、正しい情報を得られないとなれば誰だって気が立つだろう。   「…あ!レミちゃん」    彼女を見てすぐに機嫌を直したサコダは分かりやすく目を輝かせた。レミは二人の所へとぼとぼと歩いてくる。彼女は一人で、その後ろにウィルソン達はいない。   「…二人は?」 「えっと…すぐ来ると思うよ…。あ、ほら、あそこ」    後ろを振り返った先に二人の姿が見えた。酒でも飲んでいるのかというほどフラフラ千鳥足のヒラキは、ウィルソンに支えられながらどうにか歩いている。ノエルはそっと二人に駆け寄った。 「ノエル。悪い、こいつを寝かせといてくれ」 「…大丈夫なのか?顔色が悪いようだが…」    ヒラキは朦朧として焦点が合っていない。先程話した時は普通だったのに、一体どうしてしまったのか。ノエルは彼を床にゆっくり座らせた。   「彼はどうしたんだ?」 「体調が悪化したんだろう。」 「さっきはここまでではなかったが…」  ノエルはレミの顔色が暗く変わったところを見逃さなかった。彼女は心当たりがあるはずだ。ノエルはとりあえず自分の上着を脱いで丸め、枕にしてヒラキを寝かせた。 「治療室に連れてくすか?」 「いや。大丈夫だ。暫く寝かせておけ」  ウィルソンはフードを深く被り直してヒラキの隣に腰を下ろした。「少し眠る。」とそれ以上の会話を遮断する。ノエルはレミに話を聞こうと思ったが、配給の毛布を貰いに行った。 「今日は冷え込みそうっすね〜。床冷たいだろうなあ…」 「…そうだな。」  今晩はこの人混みに紛れて眠る事になるだろう。上部駅に瓦礫が直撃しないことを願う他ない。    

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