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◾️第10章 先生のいない試験会場

試験当日がやってきた。 国立魔法省入省試験会場。 広大な魔力測定ドームの中、俺は指定された席に座っていた。 周囲は緊張した空気に包まれ、魔力が淡く揺れている。 でも、俺の意識は会場にいながら、別の場所にあった。 (先生……いない) 最後の個人指導から、もう二週間以上、透に触れられていない。 うなじが、ひどく寂しい。 魔力が勝手に乱れ、集中しようとするたびに、透の低い声が脳裏に蘇る。 「我慢しろ」 その言葉を思い出しただけで、下腹の奥が甘く疼き始めた。 試験官の声が響く。 「第1種魔力制御試験、開始」 魔力の流れを測定する装置が起動する。 俺は目を閉じ、うなじから魔力を安定させようとした。 しかし―― (先生の指……ここに触れて、深く流し込まれて……奥まで、ねっとりと……) 思い出がフラッシュバックする。 透の熱い魔力、内側を這うような感覚、とろとろに蕩ける快感、寸止めされた苦しさ。 「っ……」 うなじが熱くなり、魔力が大きく揺らぐ。 装置が警告音を小さく鳴らした。 (集中しろ……今は試験だ) 自分に言い聞かせるが、体は正直だった。 名前を呼ばれたような気がして、びくりと肩が跳ねる。 「七瀬晴」 試験官に名前を呼ばれ、俺は慌てて魔力を整えた。 必死に透のことを頭から追い出そうとするが、逆に思い出が鮮明になる。 透の匂い。 「我慢しろ」という低い声。 壁に押し付けられながら浴びせられた言葉責め。 「あ……っ」 小さく喘ぎが漏れそうになり、唇を強く噛んだ。 隣の席で試験を受けている仁が、ちらりと俺を心配そうに見た。 (仁……ごめん) 仁はすでに自分の試験を落ち着いて進めている。 健気で、まっすぐな幼馴染。 俺とは違う道を、しっかり歩いている。 試験が全て終了した後、会場を出た瞬間、俺は強い虚無感に襲われた。 (終わった……) 達成感などない。 ただ、透に触れられない現実が、これから本格的に始まるのだという事実だけが、重くのしかかってきた。 **** 夜、寮の部屋に戻った俺は、ベッドに倒れ込んだ。 体が熱い。 試験の疲れとは別の、疼くような熱。 「……先生」 名前を呼んだだけで、頭がぼうっとする。 我慢できなくなり、服を乱暴に脱ぎ捨ててベッドに横たわった。 「先生……先生……っ」 熱くなったものを右手で握り、激しく扱き始める。 同時に、左手の中指を自分の後ろに伸ばし、蜜穴に押し当てた。 「ん……っ、は……入って……先生の魔力……」 指を一本、ゆっくりと押し入れる。 自分では到底再現できない透の深い魔力を、必死に思い出しながら指を動かす。 「あっ……あんっ……もっと、奥まで……」 指を深く沈め、かぎ状に曲げて敏感な内壁を擦る。 右手の動きは加速。 涎を垂らしながら喘ぐ。 「はぁ……っ、んぐ……先生の、指……熱い……とろとろに、されてる……」 意識が飛びかける。 目が虚ろになり、口元から透明な涎が糸を引いて滴り落ちる。 「先生……っ、壊して……俺を、先生の専用に……して……あぁっ!」 指を二本に増やし、必死に透の魔力の動きを真似しようとする。 でも、全然足りない。 透に実際に触れられている時の、あの圧倒的な充足感が得られない。 「うっ……あんんっ……! 先生、いないと……だめ……っ」 腰を激しくくねらせ、指を奥まで突き入れながら、前を荒々しく扱く。 頭の中が真っ白になり、意識が何度も途切れそうになる。 「先生……会いたい……触れて……お願い……っ」 名前を呼び続けながら、限界まで追い詰め、熱いものを周囲に散らした。 「……っ、あ……」 体がびくびくと痙攣する。 達した後も、指を後ろから抜くことができず、虚しく内側を掻き回し続けた。 満たされない。 虚しい。 涎を垂らしたまま、俺は荒い息を繰り返しながら天井を見つめた。 (……まだ、足りない……) 触れられない地獄。 先生がいるのに、触れられない。 支えだった存在が、逆に最大の苦痛になっている。 それでも、俺は透を必要としていた。 いない方がマシかもしれないのに、それでも欲しくてたまらない。 物理的な距離が、心理的な距離をさらに拡大させている。 俺はベッドの中で体を丸め、涎の跡を拭きもせずに静かに目を閉じた。 (先生……まだ、欲しい……) 触れられなくなっても、依存は消えない。 むしろ、ますます深く根を張っていく。 試験会場で感じた虚無と、夜の壊れかけた疼き。 それらが、俺を完全に抜けられない場所へと追い込んでいた。

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