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10.裏切りの夜

フレアは宿で受付を済ませた。そういう事をする宿だ。  後ろでガシュウが落ち着きなく立っている。  部屋の鍵を受け取ると、ガシュウのほうは振り返らずに歩き出した。  ガシュウはすぐには動かなかった。フレアが突き当たりの廊下を曲がると、ようやく小走りでついてきた。  指定された部屋の前で立ち止まる。ガシュウはやはり、少し後ろで立ち止まった。  鍵を差し込み扉を開ける。同時にガシュウの腕を掴み、引き寄せる。ガシュウは不安の表情で見上げてきたが、無視して室内に引きずり込んだ。  フレアは空いた手で鍵を回した。  ふたりの空間に、冷たい施錠音だけが響いた。  小さなテーブルとソファ、それにダブルベッドがある一室。よくある間取りだ。  それでも物珍しいのか、ガシュウはキョロキョロと部屋を見渡していた。体を強張らせて緊張を隠せていないくせに、そういうところは変わらない。  そんなガシュウの背中を強めに押してやる。「あわわっ」と間の抜けた声を発してベッドに倒れ込んだが、それ以上騒ぐことはなかった。  うつ伏せのまま固まって動かない。  ガシュウに覆いかぶさった。背中に体重をかける。 「っ、ひ」  ガシュウは小さく悲鳴をあげると、シーツを掴みさらに顔を沈めた。 (無抵抗か)  これからされることが分かっているはずなのに、受け入れるのか。  今まで何人と同じことをしてきた。  言いようのない感情が胸の奥底で煮えている。  身体が熱い。  身体中が苛々する。  呼吸が浅くなる。  苦しい。  声を荒げたい衝動を抑える。静かに、ゆっくりと口を開いた。 「おまえは」  声が震えた。  言葉が揺れないように、慎重に息を吸い込む。 「いつもこんなことをしているのか」  ガシュウは答えない。  シーツに頭を深く沈め込んだまま身体を小さくしている。 「こんなことをして金を稼いでいたのか」  反応はない。  まだ、否定の言葉を期待していた。  馬鹿げている。  この要領の悪い男が、金を稼ぐ方法なんて限られている。  そんなことは分かりきっていたはずだ。  何を夢見ていた。  冷静になろうとしても、身体の熱は上がっていくばかりだ。  ガシュウの髪を、後ろから掴んだ。  硬い髪質は、繊細な白い髪とは裏腹に、丈夫で掴みやすい。  強引に振り向かせた。  向き合ったガシュウの表情は、恐怖に怯えていた。眉尻は下がり、眉間に皺ができている。  見開いた目から涙が落ちていた。  まるで許しを乞うかのようだ。  ガシュウは結んでいた口を開いた。 「あ、あの。騎士さま。ごめんなさい。許してください。ただの小市民が、騎士さまに馴れ馴れしくして申し訳ございませんでした。ごめんなさい、ごめんなさい」  フレアの中で、何かが切れた。 「何を被害者ぶってる。誘ったのはおまえだ。おまえの方だ。そうだろう! 俺が悪いのか?」 「い、いえ。そんな。悪いのはガシュウ…」  言い終わる前に、ベッドに頭を乱暴に沈めてやった。髪を離して身を起こし、ガシュウからローブを脱がし投げ捨てた。  ぶかぶかのローブの下に隠されていた身体は骨の形が浮き出っていた、痛々しい程に細い。  ボロボロのシャツは丈が合っておらず、ヘソが見えていた。  想像通りの身体で、少しも面白くなかった。  ガシュウのズボンの裾に手をかけて下着ごと引き抜いた。 「騎士さまっ!」  ガシュウが身を起こす。浮き出た鎖骨を拳で押し込んでベッドへ沈め返す。 「動くな」  命じるとガシュウは動かなくなった。  フレアは前だけを開けた。勃ち上がったペニスは何に興奮しているのか分からない。  ガシュウの身体を裏返す。肉のついていない貧相な尻を割り、カリ先を当てる。  「あぐうっ」  ガシュウは間の抜けた声をあげた。身体全体を震わせるが、言いつけは守りそれ以上動かなかった。  尻穴に入れようとカリ先を押し込んでみるが、慣らしてないそこには、なかなか入らない。  焦れて苛々する。気持ちだけが逸る。  フレアは尻からペニスを離すと、ガシュウを仰向けに裏返した。  顔の上に跨り、ガシュウの顎を掴み親指を口内へ差し込む。  唇の隙間にカリ先を当てた。 「噛むんじゃないぞ」  間抜けなこいつなら噛みそうだと、どこか冷静に思う自分がいた。  ガシュウの頭上に手をついて、口内の奥へと腰を進めた。  喉奥の入口が狭くなっている。体重をかければ狭いそこへ侵入を許した。  狭い入り口で何度も出し入れをして楽しんだ。  息が苦しいのだろう。ガシュウはフレアの服を掴み引っ張り、足をバタバタさせていた。  構わずにさらに奥に進めた。  喉奥の柔らかい肉がペニスに吸いついてくる。その肉を揉むように腰を動かした。  アナルを使ったセックスをするように、激しく唇に打ちつけた。  身体中に広がっていた熱は一ヶ所に集まり、灼熱の液体となる。吐き出したくてたまらない。  ガシュウの髪を掴み頭を固定する。  ほぼ顔に乗っている状態でさらに激しく腰を打ちつけた。 「ん、んぐ」  空気を求める苦しげな声が漏れる。  それは声帯を震わせて、ペニスにさらなる快楽を与えるだけだった。  込み上げるものに耐えるつもりはなく、そのまま射精した。  出し切るまで出し入れを繰り返し、排泄感を堪能する。  息を深く吐き出した。  そうして口内からペニスを引き抜いてやる。  目を瞑り、脱力感を味わう。  その下でガシュウが激しく咳き込んでいた。  フレアは身を起こし、ベッドから下りると服の裾を引っ張り身なりを整えた。  ガシュウのペニスに目をやる。萎えていた。  勃起はしなかったのか。つまらない男だ。  手を洗うため洗面台へ行く。石鹸を丁寧に泡立ててから流した。  備え付けのタオルで濡れた手を拭いて、鏡の前で髪の乱れを直す。  それから部屋に戻ると、ガシュウはベッドの上で四つん這いになっていた。  まだ咳き込んでいる。  丸出しの尻が滑稽だ。  気配に気がついたガシュウがフレアを見た。  泣き腫らした顔は、涙と体液でぐちゃぐちゃだった。  頬は赤いのに顔色は真っ白だ。  その姿に落ち着いたはずの興奮が沸き上がる。  胸の痛みはなんだろう。  フレアは感情に任せて叫んだ。 「お前がそうしたんだ。お前が望んだことだ。被害者みたいな顔をしやがって!」  似たことを酒に酔った父が叫んでいたような気がした。自分が放った言葉に吐き気が込み上げる。  フレアは大袈裟に足音を立てて部屋の出口へ向かった。ノブに手をかけると思い出したかのように動きを止めた。 「そうだ。ほら、報酬だ。受け取れ」  財布から札を数枚掴んでガシュウに向かって投げ捨てた。  ふわりと舞い上がった札が床に落ち切る前に、扉を乱暴に閉めて部屋から出ていった。

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