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12.待ち人
先日表彰された褒美だと、フレアは配属先の選択権を与えられた。
やけに待遇が良い。この件にこれ以上首を突っ込むなという牽制か。
フレアにそんなつもりは毛頭ない
両親の虚栄欲を満たすためだけに騎士になった。この国も両親に似ている。外面だけは良い。
配属先はどこでもよかった。誉れある役職に興味はない。
それでも王宮の中は閉塞感があり、古い空気がそのまま残っているようで苦手だった。
静まり返った退屈な時間は過去の記憶を辿りやすい。
外の見回りに戻れるように希望を出しておいた。
開放感と、程よくサボれるところが気に入っている。
この国は観光に力を入れていて、それが国の主な財源となっている。外から多種多様な人々が行き交っては去っていく。
人混みの中でフレアは騎士というシンボルに溶け込んでいればいい。
自分が紛れるのには丁度良い。
ガシュウとの出来事が、昨日の夜のことだった。
あまり寝られていない。高い位置まで上がった太陽は眩しくて、煩わしい。
巡回の途中で、インチキ占い師がいつも店を構えている路地裏へ、足を運んだ。
会ってどうするつもりなのだろう。
頭の整理はつかず、それでも歩みは止めなかった。
路地裏にたどり着くと、知らない男がボロ布を広げて物売りをしていた。
想像していた人物が居ないのは拍子抜だが、安心したのも確かだった。
「この場所は商売禁止エリアだ」
警告など普段ならばしない。
この街でそんなことをしていたらキリがない。
物売りの男は騎士の制服に恐縮し、そそくさと荷物をまとめて立ち去った。
この薄暗い路地裏に、自分だけが取り残された。
任務時間も終わり、さっさと制服を脱ぎ捨てた。
名誉ある騎士の制服は窮屈すぎる。
私服の麻地のシャツに着替えたフレアは、西の歓楽街へ向かった。
不法投棄のようなベンチに座り込み、ぽつぽつと流れる人の影を追っていた。
世間は同性愛に偏見も根強いが、認める動きも活発だった。多様性が売りのこの国の政策は同性婚を推進している。外面をよくするためだけの華々しい政策だ。
おかげでフレアの性指向におかしな目が向くことはなかった。
それだけはこの街の好きなところだった。
そんな事を考えている間にも、何人かの男に声をかけられたが、誘いは全て断った。「あいにく待ち合わせをしている」と言えばそれ以上の深追いはされない。
……待ち合わせ。
口から出任せのはずの言葉が、胸の奥で引っかかる。
誰を待っているのか、誰の影を追っているのか。
分かりきっているはずなのに、認められないでいる。
だいたい、会って何をしようというつもりか。
謝罪か。それとも、昨日の夜の続きか。
頭を左右に振った。
くだらない。
もう帰ろうと立ち上がった。
ベンチがギジッと嫌な音を立てたが、気にも止めずに歩き出した。
家に帰ったところで何もない。明日に備えて寝るだけの場所だ。
足取りが重くなる。それでも家路につくしかないのだから、仕方なく顔を上げた。
上げた視界に入った遠くの街灯。その灯りの下でひとりの人影をとらえた。
フレアは足を止めた。
今日、自分が探していた「誰か」がそこにいた。
ボロボロの黒いローブから伸びる貧相な白い足。後ろ姿でもわかる。
……ガシュウ。
速足でそこに向かった。
近づいても気づく様子はない。
追い抜きざまにガシュウの腕を掴み、そのまま強引に歩き続けた。
「えっ!? ええっ?」
ガシュウは緊張感のない声を上げた。それでも抵抗をせずにされるがままだった。
昨日の夜とは違う宿屋に入った。
腕を握ったまま受付を済ませて部屋へ移動する。室内へ引きずり込んだら腕を離してやった。
握った力が強かったせいか、ガシュウは腕をさすっている。
それからガシュウは警戒した様子でフレアを見上げて、視線が合うと目を見開いた。
「あ。どなたかと思えば、騎士さまじゃございませんか」
不安そうだった表情が少しだけ和らいだ。
今頃フレアだと認識したのか。
他の知らない誰かに同じことをされても、大人しくついて行くということか。
頭に血がのぼる。
ベッドの端に乱暴に座った。
前をゆるめて、すでに勃ち上がったペニスを取り出した。
ガシュウは身を固くした。両手を口元で合わせていたが、視線はフレアのものに釘付けだった。
「くわえろ」
静かにそう命じた。ガシュウは目をぱちぱちとさせて瞬きを繰り返している。
「くわえる? チョコでもくださるの」
間の抜けた声に苛立つ。
「馬鹿。ペニスをくわえろと言っている。口の中に入れて舐めまわせ。昨日の夜したみたいに、だ」
ガシュウはただでさえ大きい目玉をさらに大きくした。
それから震える瞼をゆっくりと伏せた。
ゆっくりとローブを脱いで、ゆっくりと床に置いた。
跪いて、足の間に身を屈める。様子を伺うように上目で顔を覗き込んできた。目を細めてやるだけで反応は返さなかった。
ガシュウはペニスに視線を戻すと、ごくりと息を飲み込んだ。小さく口を開き、たどたどしく先だけをそっと口に含む。
目を瞑るとカリ首までゆっくり飲み込んでいった。
舌の弾力が心地よい。
はっと短く息を吐く。
ガシュウはそれ以上何をするわけでもなく、咥えたまま止まってしまった。
ガシュウの頭に手を乗せる。
「もっと、奥に入るだろ」
命じればガシュウはさらに飲み込んでいった。
竿を半分まで飲み込んだところで「がはっ」と咳き込んで口を離した。床に手をつき、ゲホゲホと肩を揺らしている。
構わずガシュウの髪を掴み立ち上がらせる。「痛い」と叫んでいたが、そのままベッドに放り込んだ。
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