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13.泣いている

フレアはガシュウの胸を押さえ込んだ。  片手でベッドサイドのチェストを開ける。潤滑油の小瓶が入っている。  それを手に取り、蓋を開けて中身を指に絡ませた。  ガシュウの足を割り、ガシュウの萎えたペニスの下を辿って尻の穴に触れる。 「はっ……」  ガシュウは腰を跳ねさせた。  ぬめりのある指で尻穴の周辺を撫で続けてやる。何度か潤滑油を足して揉み続けていると、やわらかく吸いついてくる。  なめらかに指を滑らせて、穴の中に指が呑み込まれていく。 「ひっ、ぃ、」  小さく悲鳴を上げたが抵抗しないのを良いことに、指を付け根まで深く差し込んだ。抜き差しをして内側を慣らす。 「うぐ、っ……」  動かすたびに尻穴がギュッと締まる。  指を締めつけて離さない。  ガシュウのペニスは相変わらず萎えていて、興が冷める。  空いた手で握ってやると腰が上がった。 「やっ、うあっ……あぁ」  甘い声の出し方を知らないのだろうか。ただただ耐えるだけの声をあげている。  上下にしごいてやれば、荒くなる呼吸の合間に少しは甘い吐息が混じる。  ペニスをいじる間にも、穴に差し込む指の数を増やる。異物を吐き出そうとする穴は、締め付けと緩みを繰り返した。  今、どんな表情をしているのだろう。  ガシュウの顔を覗き込めば、両手を交差させて顔を隠してしまっている。 「手を下げろ。シーツを握っておけ。そして絶対に離すな」  そう命じればガシュウは素直に手を下ろた。腰のあたりのシーツを握りしめる。  ガシュウの表情は、のぼせたように赤く染まり、大きな目は固く閉じられていた。瞼の隙間からは涙が流れている。  唇は少しだけ開き、浅い呼吸を繰り返していた。  フレアは指を引き抜いた。  指を抜いた瞬間に、ガシュウは身体を震わせた。反応が返ってくるのは愉快で、退屈しなくて良い。  ガシュウのペニスがすっかり勃ち上がっていることも気分が良かった。  体勢を整えると、ペニスをガシュウの尻穴に当てた。ぬめりのある尻穴は吸いついて、すんなりと飲み込んでいく。 「あっ……ぐっ……」  ガシュウの声は相変わらず色気が乗らない。  ゆっくり奥まで差し込むと、腸の内圧はペニスを外に押し出そうとする。  締め付けられるような内側の動きに、吐息が漏れそうだったのを耐えた。  無遠慮に腰を振れば肉圧の刺激を受けて脳に快感が走る。 「うあ、んあ……はっ」  ガシュウは苦しげな声を上げている。  言いつけは素直に守っており、シーツから手は離さずに固く握りしめていた。  手を伸ばし、ガシュウのペニスを握り込む。  それはフレアの手の中にすっかりと収まった。  先からは透明の液が溢れていて、それを絡めるように撫で付ける。 「んんんっ」  声を噛み締め、身をよじるガシュウが逃げられないように挿入を深くした。  手の上下動を速めてやれば、呆気なく射精した。  手の中でペニスが震えている。  腰の律動を止めないまま、ガシュウの顔に身を寄せた。鼻と鼻がくっつく距離まで近づけて両手で頬を押さえて固定する。 「目を開けろ」  ガシュウは閉じていた目をゆっくりと開けた。  広い白目は、充血して赤くなっていた。  ガシュウと瞳をしっかりと合わせて、離しはしない。瞳を捕らえたまま腰の動きを速めていく。  高まりを感じて、中で射精した。  どくどくと脈打つ自身のペニスと、痙攣するガシュウの腸壁が同じリズムをとっている。  唇が触れ合いそうなほど近くにあり、お互いの生温かい吐息が混じって息苦しい。  余韻を堪能すると、身を起こした。顔の距離が出来れば、涼しさを感じた。  ペニスを引き抜いてやると、少し遅れて尻穴から精液が垂れた。それは普段のガシュウからは程遠い、淫美な光景だった。  フレアは目を離すことができなかった。 「はっ、ひっく」  ガシュウの息があがった。 「うっ、うわ、うあああんっ」  子供のように声を上げて泣き出す。しゃくりあげ、肩で息をして呼吸が乱れる。  フレアは動くことが出来なかった。体が冷えていく。  ガシュウは両手で顔を覆い、大きな声で泣き続けた。  目の前のガシュウを遠くに感じた。  両手で隠された顔を見つめる。  ……声が、頭の奥で鳴り響く。  泣き声が、やまない。  怒鳴り声が、混じる。  父と母が、喧嘩を、している。  幼い自分が、耳を、ふさいでいる。  泣いているのは、誰なんだ。  泣くな。やめろ。お願いだ。  ――泣かないで。  フレアは振り払うようにベッドを叩いた。その衝撃でガシュウが声を潜めた。  自分の息が荒いのは、行為の後のせいだろうか。 「うっ、ぅ……」  ガシュウの抑えきれない泣き声が漏れ始める。  フレアは立ち上がり、シャワー室へ駆け込んだ。  服を脱ぎ払い、蛇口をひねればシャワーの水音に全てがかき消されていく。  まだ泣いているであろう存在を、頭の中から追い出すことに必死だった。

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