15 / 59
15.そういう契約
噴水広場から少し離れた、人通りの少ない路地裏には、大きな樹が生えている。葉の密度が濃いその樹の周辺は、昼でも薄暗い。
ガシュウが占いの店を出していたのは、そんな樹の下だった。
今は占いの店は出していない。インチキ占いをすることよりも、もっと重要なことが出来たからだ。
この場所は、ふたりの待ち合わせ場所になっている。
フレアにここで待てと言われている。
ガシュウはフレアが来るのを待っていた。
フレアは騎士の任務時間が終わると、この路地裏の樹の下でガシュウと合流する。そのまま歓楽街の宿屋に向かうのが、いつもの流れになっていた。
そういう契約をしたのだ。
陽も落ちて、ただでさえ暗い路地裏が闇に包まれ始めた頃に、フレアは、やってきた。麻のシャツに紺のズボンを合わせていて、ラフな服装はゆったりとしている。
隙を見せない騎士の制服姿の時とは随分と印象が変わる。
こちらに歩いてくるフレアを見つめて待っていたが、フレアは視線を下げて、遠くの地面を見つめていた。すれ違う直前で視線があがり、目が合った。
それでもフレアが止まることはなく通り過ぎてしまうので、その背中を追いかけた。
宿屋の部屋に着くと、フレアはソファに、どかりと身を沈めた。足を開きくつろぐと、入り口でまだ立ち尽くしているガシュウを見た。
「いつもの、しろよ」
それが合図かのように、ガシュウは頷くと、フレアの方へ歩みを進めた。ローブを脱いで丁寧に床に置く。
フレアの足の間で膝をついて、指でゆっくりと前を開ける。この時はどうしても緊張してしまう。自然と指先が震える。
現れたフレアのモノはまだ勃っていなかった。慣れない手つきで両手で包み込んで、上下に動かす。
うまく出来ているかも、分からない。
視線だけをあげて、フレアの表情を覗き込んだ。切れ長の金色の瞳は、とても冷たくて、ガシュウの心を突き刺すようだった。とてもじゃないが見つめていられない。
すぐに視線を落とした。
フレアのモノは、勃ち上がりの兆しをみせていた。
「くわえろ」
頭上から感情の乗らない声が響いた。
うまく身体が動かない。
口を大きく開けて、先端を口に含んだ。
もっと奥に入れなければ、と焦って飲み込むと、喉奥に当たり、えずいてしまう。
フレアのモノを口から離し、ゲホゲホと咳き込んだ。
フレアはゆっくりと、長く、息を吐いた。ため息だろうか。
フレアは立ち上がるとガシュウの胸ぐらを掴んだ。無理やり立たされ、乱暴にベッドに投げ捨てられる。
乗りかかられて、後ろの穴をほぐされて、まだ慣れてないそこに挿入される。
「あっ、うゔ、あう、う」
痛みに耐える声が出てしまう。
そう、痛いのだ。
とても。とても痛い。
それでもフレアと繋がる体温は、熱くて、心地よくて。どうしてだろうか。涙腺が緩んでしまう。流れる涙も火傷するほど熱いように感じた。
遠慮のない打ちつけに歯を食いしばって耐えた。
最奥をえぐるようにフレアのモノが突き刺さると、動きが止まり、中で出している脈動を感じる。フレアの荒い吐息が耳にかかり、ゾワゾワと震えた。
ゆるゆると何度か擦ると、フレアは自身のモノを抜いた。
ガシュウはそっと振り返りフレアの表情を盗み見た。
行為が終わると、フレアはいつも不機嫌そうにしている。今日もそうだ。なぜなのだろう。
体力のないガシュウは、乱れた呼吸を整えることに集中して、それ以上の考えることは出来なかった。
深呼吸をして、溢れていた涙を拭う。
フレアはガシュウを一瞥すると、言葉もなくベッドからおり、シャワー室へ行ってしまう。
ひとり取り残されるこの時間が、苦手だった。
自分を抱きしめるように身を丸くした。
早かった鼓動は次第に穏やかなリズムになっていく。
熱くなった身体が冷めていくのを感じている。
フレアがシャワー室から出てくると「おまえも浴びていけ」と短く言われた。身を起こして、頷いて、ゆっくりとベッドからおりて、シャワー室に向かった。
初めの頃は、宿屋のシャワー室を使用できるだなんて、思いもしなかった。身体の汚れが気になった時は、帰路の途中にある川辺で身を清めていた。夜の川の水は、とても冷たい。
シャワーのお湯は温かくて、浴びると安心する。緊張がほぐれて眠くなってしまう。
「ポフにもシャワーを使わせてあげたいな」
自然と言葉が出た。
ガシュウはいつだってポフのことを考えている。ポフのために何ができるだろう。いつだってそう考えている。
シャワー室を出ると、すでにフレアの姿がなかった。先に帰ったのだろう。それはいつものことだった。
テーブルに置かれた数枚の札を懐にしまった。フレアからの報酬だ。これでポフに豊かな暮らしをさせてあげられる。ポフのためなのだ。ポフのため。
おぼつかない足取りで、ガシュウは宿屋を後にした。
ともだちにシェアしよう!

