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15.そういう契約

 噴水広場から少し離れた、人通りの少ない路地裏には、大きな樹が生えている。葉の密度が濃いその樹の周辺は、昼でも薄暗い。  ガシュウが占いの店を出していたのは、そんな樹の下だった。  今は占いの店は出していない。インチキ占いをすることよりも、もっと重要なことが出来たからだ。  この場所は、ふたりの待ち合わせ場所になっている。  フレアにここで待てと言われている。  ガシュウはフレアが来るのを待っていた。  フレアは騎士の任務時間が終わると、この路地裏の樹の下でガシュウと合流する。そのまま歓楽街の宿屋に向かうのが、いつもの流れになっていた。  そういう契約をしたのだ。  陽も落ちて、ただでさえ暗い路地裏が闇に包まれ始めた頃に、フレアは、やってきた。麻のシャツに紺のズボンを合わせていて、ラフな服装はゆったりとしている。  隙を見せない騎士の制服姿の時とは随分と印象が変わる。  こちらに歩いてくるフレアを見つめて待っていたが、フレアは視線を下げて、遠くの地面を見つめていた。すれ違う直前で視線があがり、目が合った。  それでもフレアが止まることはなく通り過ぎてしまうので、その背中を追いかけた。  宿屋の部屋に着くと、フレアはソファに、どかりと身を沈めた。足を開きくつろぐと、入り口でまだ立ち尽くしているガシュウを見た。 「いつもの、しろよ」  それが合図かのように、ガシュウは頷くと、フレアの方へ歩みを進めた。ローブを脱いで丁寧に床に置く。  フレアの足の間で膝をついて、指でゆっくりと前を開ける。この時はどうしても緊張してしまう。自然と指先が震える。  現れたフレアのモノはまだ勃っていなかった。慣れない手つきで両手で包み込んで、上下に動かす。  うまく出来ているかも、分からない。  視線だけをあげて、フレアの表情を覗き込んだ。切れ長の金色の瞳は、とても冷たくて、ガシュウの心を突き刺すようだった。とてもじゃないが見つめていられない。  すぐに視線を落とした。  フレアのモノは、勃ち上がりの兆しをみせていた。 「くわえろ」  頭上から感情の乗らない声が響いた。  うまく身体が動かない。  口を大きく開けて、先端を口に含んだ。  もっと奥に入れなければ、と焦って飲み込むと、喉奥に当たり、えずいてしまう。  フレアのモノを口から離し、ゲホゲホと咳き込んだ。  フレアはゆっくりと、長く、息を吐いた。ため息だろうか。  フレアは立ち上がるとガシュウの胸ぐらを掴んだ。無理やり立たされ、乱暴にベッドに投げ捨てられる。  乗りかかられて、後ろの穴をほぐされて、まだ慣れてないそこに挿入される。 「あっ、うゔ、あう、う」  痛みに耐える声が出てしまう。  そう、痛いのだ。  とても。とても痛い。  それでもフレアと繋がる体温は、熱くて、心地よくて。どうしてだろうか。涙腺が緩んでしまう。流れる涙も火傷するほど熱いように感じた。  遠慮のない打ちつけに歯を食いしばって耐えた。  最奥をえぐるようにフレアのモノが突き刺さると、動きが止まり、中で出している脈動を感じる。フレアの荒い吐息が耳にかかり、ゾワゾワと震えた。  ゆるゆると何度か擦ると、フレアは自身のモノを抜いた。  ガシュウはそっと振り返りフレアの表情を盗み見た。  行為が終わると、フレアはいつも不機嫌そうにしている。今日もそうだ。なぜなのだろう。  体力のないガシュウは、乱れた呼吸を整えることに集中して、それ以上の考えることは出来なかった。  深呼吸をして、溢れていた涙を拭う。  フレアはガシュウを一瞥すると、言葉もなくベッドからおり、シャワー室へ行ってしまう。  ひとり取り残されるこの時間が、苦手だった。  自分を抱きしめるように身を丸くした。  早かった鼓動は次第に穏やかなリズムになっていく。  熱くなった身体が冷めていくのを感じている。  フレアがシャワー室から出てくると「おまえも浴びていけ」と短く言われた。身を起こして、頷いて、ゆっくりとベッドからおりて、シャワー室に向かった。  初めの頃は、宿屋のシャワー室を使用できるだなんて、思いもしなかった。身体の汚れが気になった時は、帰路の途中にある川辺で身を清めていた。夜の川の水は、とても冷たい。  シャワーのお湯は温かくて、浴びると安心する。緊張がほぐれて眠くなってしまう。 「ポフにもシャワーを使わせてあげたいな」  自然と言葉が出た。  ガシュウはいつだってポフのことを考えている。ポフのために何ができるだろう。いつだってそう考えている。  シャワー室を出ると、すでにフレアの姿がなかった。先に帰ったのだろう。それはいつものことだった。  テーブルに置かれた数枚の札を懐にしまった。フレアからの報酬だ。これでポフに豊かな暮らしをさせてあげられる。ポフのためなのだ。ポフのため。  おぼつかない足取りで、ガシュウは宿屋を後にした。

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