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8月5日 2
スタンプラリーの景品は、アルパカのストラップだった。アルパカがたいそう気に入ったらしい遥は喜んで携帯につけて、俺も倣うように携帯につけた。お揃いだと少し照れながら話す姿に懲りずに可愛いと言ってしまい殴られかけたのはお察しだ。
そうして動物園を十分に楽しんだあとの帰りのバスにて、流石に一日中日光にさらされたせいか遥の顔色は悪くぐったりしてしまった。送って行こうかと思わず言ったが、遥は首を緩く振っただけだった。多分電車でここまで来ているはずなのに、遥は行きと同じく俺と同じバス停で降りた。駅前から俺達の降りたバス停は結構遠くて、どうしてそんな頑なに自分を知られるのを嫌がるんだと、心配も相まって苛立ってしまう。そんな俺を見た遥は、家の人に来てもらうから大丈夫だよと諦めて言った。それなら俺もまだ安心できると頷いた。一応迎えが来るまで待っていようかとも思ったが、遥があまりにも大丈夫と何度も言うから帰ってからちゃんと連絡することを約束させ、一足先に家に帰った。
帰ってから数時間後、遥からごめんねと連絡が来た。すぐに電話をかけると、一度電話が切れてすぐに折り返しかかってきた。
『びっくりした!思わず一回間違えて切っちゃったごめん』
「体調は?」
『あ、えっと、涼しい部屋で休んだからもう回復したよ。念の為先生にも診てもらったし』
「先生はなんて?」
『ただの疲労じゃないかって』
ほっと胸を撫で下ろす。正直、電話が来るまで気が気でなかった。今日一日かなり気をつけて過ごしていたとは思ったが、それでも外に出る回数の少ない遥には堪えたらしい。
「ごめん、もっと気遣えば良かった」
『全然大丈夫だよ!冷えピタも貼ってもらったし、なるべく日陰使って歩かせてくれたし、定期的にベンチで休ませてくれたし…むしろお礼言いたいくらい』
動物園では動物が驚くからという理由で日傘が禁止されていたため、日陰がある側に遥を寄せて歩いた。いくら帽子を被っていたとしてもコンクリートから跳ね返った熱で体は熱くなる。ベンチもなるべく日陰やパラソルがあるところを選んだ。それでも遥の体調が悪くなったことには変わりない。
「ごめん」
『落ち込まないで。僕は何もしてなくても体調悪くなることもあるし、徹が気にしてくれてたからこれだけで済んだんだもん。はい、この話終わり!』
電話の向こうで遥がぱちん、と手を叩いた。そう言われてしまうとこれ以上反省することもできず、話を切り替えるために次はどこに行きたい?と聞いた。
『遊園地!』
「また外…?」
『小言は聞きませーん。先生にも長時間外に出るなって言われたけど、いのち短しあそべよ少年!僕は死ぬ前に沢山遊びたいんだ!』
自虐がすぎて突っ込むことができない。とりあえず、それなりの距離であまり有名ではないが十分に遊べる遊園地を携帯で探した。というか、遥の体で乗れるような乗り物はあるだろうか。なかったらただただ土産物ショップを回るだけになるが…まぁそれも楽しいだろう。
「じゃあまたよさそうなとこ送っとくな」
『いつもありがとう徹……あと、電話かけてきてくれてありがとう』
「毎日電話するルールだろ?」
『朝したから、もう今日はしないと思ってた』
なるほど、確かに今朝チケットを買おうと早めにバスに乗ろうとした遥を止めるために電話をかけた。あの時点で30分くらいしていたし遥が今日は無しだと思ったのも頷ける。
「…三十分くらいとは決めてるけど、回数は決めてないだろ」
素直に心配ですぐに電話をかけたと言えばいいのに、考えるより先にそんなことを口走っていた。遥はそういえばそうだねと納得してしまった。そのままおやすみと言い合って電話を切る。遥が無事で、尚且つ声を聞いてしまうと、昼間のことが頭をよぎる。考えないようにしようと思えば思うほど、遥の鎖骨のことを思い出してしまう。最近抜いてないからだとあの時は言い聞かせたが、実際ここ一ヶ月ほどそういうことをしていない。高校生な上そういう店に行くこともできないから、基本的にネットで動画を漁るのだが…前まで使っていたゲイビのサイトが突然閉鎖されてしまったせいで頭を抱えていた。普通のサイトはほとんど男女のセックスばかりで、そう言うのを見ても気分は上がらないし、むしろ萎える。数少ない中でゲイビだけを載せてくれていた神サイトだったのに、本当に残念で仕方ない。…………正直、遥の見た目は好みだ。でもそれを遥に伝えるのは憚られる。遥はゲイではないと最初に言っていたし、今だって俺を恋人として“扱っている”だけだ。それに、遥に性欲があるようには思えない。
「俺は何考えてんだ……」
そもそも的なことになると気まずくなるのは目に見えている。遥は俺のことを好きではないことを知っている。俺は俺で、好きとかではなくただの性対象として見てしまったことに罪悪感を抱いているだけだ。ため息をついて、もう寝ようと部屋の明かりを消した。
その夜久々に夢を見た。
俺が遥を押し倒すという、最悪極まりない物だった。
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