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小話
レンズ越しに見る彼は照れたように俺から目を逸らした。太陽の光が燦燦と降る中、やめてよと遥は俺からカメラを奪おうとする。
「いやだ。せっかく一眼レフ持ってきたのに」
「僕を撮っても面白くないでしょ」
「面白いよ。可愛いし」
可愛い、未だにその言葉に慣れないらしい遥は俺がその一言を言う度に顔を赤くして俯く。本当に可愛い。この可愛い俺の恋人がもうすぐ死ぬなど、誰が予想出来るだろうか。
1か月前に告白され、死ぬ前の思い出作りがしたいと言われた。お互いに恋愛感情は無かった。でもいまは…少なくとも俺は、遥のことが好きになっていた。
遥は見返すのが悲しいからと、普段写真を撮らない。だから今日は俺が写真を撮りたいからとわざわざ家から一眼レフカメラを持ってきたのだ。それを見た遥は最初呼吸が浅くなるほど笑い、自分が被写体だとわかった途端笑いを引っ込めて表情を固くした。
そうして、今、バスの待合室で遥を撮っていた。周りに誰もいないこともちゃんと確認してある。
「遥、こっち向いて」
「やだってばー。てか、撮ったところでどうするの?」
「現像する」
「現像した所でどうするの」
「現像して、枕の下に敷いて寝る」
枕の下に好きな人の写真を入れて寝るとその人の夢が見れるらしい。そんな噂を知ってか知らずか、遥は暑い日差しに負けないくらい眩しい笑顔で笑った。
現像したら、遥にもあげるつもりだ。きっと遥は困った顔をして受け取るんだろう。自分の顔の写真は欲しくないって。それでも俺は、死んでしまう遥のためになにかしてあげたかった。最後の、思い出なのだから。
「そうだ…あのね、徹。僕写真撮るの初めてなんだ。だからちょーっと貸してほしいな〜」
俺を撮るために見えついた嘘をつく遥。俺はそれをわかっていながらも、わざと遥にカメラを渡した。
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