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 本日もまた、バイト前の時間を縫って二人仲良くお片付け中。まあ、『仲良く』なんていうのは少し盛ったけれど、あれ以降、結月とちょくちょく言葉を交わすようになったのは事実だった。  大学でどの学部を先行しているのかとか、どこでバイトしているのかとか、そんな当たり障りのない会話だ。理系は絶対に単位を落とす、というのは解釈一致で、どちらも文系の学部生。しかし、夜勤のナイトクラブでバイトする晃大とは対照的に、結月は週三回、昼過ぎから夕方にかけて、パートのおばちゃんに混じってスーパーで品出しやレジ打ちをしているとのことだった。  都会に住む大学生がするバイトにしては地味だなと思ったけれど、結月の奇跡のだらしなさを思えば、そのあたりが妥当な選択肢だったというのも頷ける。若者が集まるような洒落たカフェや、身だしなみが重要なアパレル店員などは、面接の時点で即不採用を言い渡させるに違いない。  せっかく整った容姿をしているのに、くだらないことで損をしているなと思った。ルッキズムだなんだと騒がれている世の中だけれど、こと男に限っては、見た目で優劣をジャッジされるのは当然の摂理ともいえる。  優美な羽根を広げて舞う孔雀のように、艶麗な歌声で囀る金糸雀のように、オスとは常々、あの手この手でメスの気を引くことで夢中の生き物だ。生命の種となる卵子を持っているのが女である以上、人間もまた、本質的な意味でその構図から逃れることはできない。  世の女が、いい男の判断基準の一つとして『容姿』に重きを置いているのであれば、我々男はそれに適応するしかないのだ。つべこべ文句を言ったところで、適応できないやつは淘汰されて消えてゆく。それが現実。  だが多くの生き物において、どれだけ必死に努力をしても、実際にメスのお眼鏡に適うのはほんの一握りのオスだけだったりする。努力しても努力しても相手にされず、嘆き、逆上するオスがいる中で、結月のように、磨けば光る素質を持った人間がみすみすその機会を棒に振っているというのは、なんだか勿体ない。身長は少し低いにせよ、それを補って余りある容姿を結月は持っているはずなのに。  ちょっとだらしない、くらいならいいのだ。意外と、そういう世話の焼ける年下彼氏みたいなのが好きな女も多くいる。  ただ、結月のこれに関しては――はっきりいって常軌を逸している。一体なにがどうなったら、前回、一緒に片付けをしてからたったの三日でこれほどまで部屋が散らかるというのだろう。  三日分の服が脱ぎ捨てられているのなら、百歩譲って理解できる。しかし、畳んでも畳んでも無限増殖のように、また皺くちゃになった服が湧いて出てくるのだ。  ――なんか、ここまでくるともう……。 「なあ結月……おまえ、もしかしてわざと部屋散らかしてね?」 「ほぎゃっ⁉」  途端に、やや離れたところでゴミ拾いをしていた結月の肩が大きく跳ねた。 「ほぎゃってなんだよ、ほぎゃって。なに、俺と一緒に片したくて、わざとやってんの? 構ってちゃん?」  それならそうと素直に言ってくれれば、ゲームくらい一緒にしてやるのに。年下のおもりをするのは得意なほうだ。 「ち、違っ――そんなふうに思われるのは心外だ! 俺はただ、本当に根っからだらしないだけで……っ」 「胸張って言うことかよ」  苦笑して、新たに手に取った服を畳もうとしたそのとき。ころんと、なにかが足元に転がった。 「ん……?」  メタルブルーのラケットと、蛍光イエローのボールがセットになったミニチュアキーホルダー。少しの間、拾い上げたそれを手のひらでじっと眺めた後、晃大は口を開いた。 「そういや結月って、テニスやってたことあんの?」  ぴくりと、また結月の肩が跳ねる。 「え……なんで急に、そんなこと……」  これ、と晃大は手に持っていたキーホルダーを結月へと向かって放り投げた。 「わっ、ちょっ」 「踏んだら壊れるだろ」  きちんと結月がキャッチしたのを見届けて、晃大は言った。  まるで心当たりがありませんといった様子で手元を覗き込んだ結月が、次の瞬間、はっと息を呑んで硬直する。よほど大切な物だったらしいことが、その表情一つで察せられた。

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