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手に取ったスマホの画面には、大学の連れの名前が。こだわることなく、晃大は応答ボタンをタップした。
「もしもし?」
『おう晃大。今、直樹 たちとカラオケ来てんだけど、おまえも来ねえ? あとで理沙 たちも来るって』
「あー、今から……」
ちらりと、結月のほうを確認する。
不安げに揺れるまん丸の瞳を見て、一瞬、反応が遅れた。
『晃大? 聞こえてる? 理沙、おまえに会いたがってたけど』
電話越しに確認を取られ、はっと意識をそちらに戻す。
「……悪い、今日はパス。俺今、ほかのやつと遊んでんだよね」
視界の隅、はっと結月の肩が揺れた。
『マジかよー。つか誰? 男? そいつも連れてくりゃいいじゃん』
「や、無理。そういうタイプじゃない」
晃大の周りの人間は基本的にノリが軽いので、会ったことのない相手でもお構いなしに誘ってくる。ゆえに浅く広い交友関係が増えてゆくわけだが、なんとなく、結月をそういう連中と引き合わせるのは憚られた。
また埋め合わせすると断って通話を切り、晃大は結月と向き直る。
「っし。んじゃ、お言葉に甘えて美味い店でも連れてってもらいますか」
仕切り直して晃大は言った。
シャワーも仮眠も中止。カラオケにも行かない。元はといえば、テニスに誘ったのも、負けたら奢りも、晃大が言い出したことだ。
「ちょいどっかで時間潰す? それとも、もう腹減った?」
「でも晃大、友達は……」
「ああ、いーのいーの。あいつらとはしょっちゅう遊び行ってるし。今日はおまえと遊ぶって決めてたから」
結月はまだ少し躊躇するような表情を浮かべていた。
「……ていうか、おまえが肉肉言うから、俺まで肉食いたくなってきたし。晩飯は焼肉決定。それまで、適当に服でも見て回ろうぜ」
少々強引だが、遠慮気味の相手にはこのくらいがちょうどいい。
「ほら、行くぞ」
言って、晃大はまた前を向いてのんびりと歩き始めた。
夕暮れ時、頬をすり抜ける初夏の風が心地よい。少しずつ傾いてゆく西陽に、ぼんやりと自分の影が滲んでゆく。
誰といても、どこにいても大差ない。自分の周りには常に大勢の人がいて、入れ代わり立ち代わりその面子は変わってゆく。
乾いた空の下、自分の足音だけが響いている。けれど、いちいち立ち止まったり、振り返ったりしようとは思わない。
来たければ来ればいいし、来たくなければ来なくていい。どっちでもいい。肉を食べてもいいし、カラオケに行ってもいいし、寮に帰ってもいいし、シャワーを浴びて寝てもいい。なんでもいいのだ。
なんでもいいし、誰でもいい。そうやって、のらりくらりと生きるのが自分には合っていると思う。
「っ、晃大……!」
駆け寄ってきた足音に被さって、名を呼ばれた。
「……ありがと」
ぽつりと落とされた言葉とともに、並んで結月が歩き始める。
ぼんやりとした影が二つ。夕日が滲むアスファルトの上で、溶け合うように並んでいた。
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