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次がある前提で話題を振ったのには、理由がある。というのも前回、負けたら奢るというルールに従って訪れた焼肉店にて、結局のところ、支払いは二人分まとめて晃大が済ませたのだ。
なにも、土壇場にて結月が支払いを渋ったわけではない。むしろ結月は必死に「俺が払う」と主張していたが、「だったらまた一緒にテニスしようぜ」と適当な条件をつけて、晃大はさらりとそれを受け流した。
さすがに、年下かつスーパーでバイトするルームメイトに奢ってもらうわけにはいかない。自分の分は自分で払うのは大前提として、本来、晃大をコテンパンにして奢ってもらう予定で店まで調べていた結月がめちゃくちゃ美味そうに肉を頬張っているところを見ると、シンプルに奢ってやりたいなという気分になった。
テニスにしろ、また一緒に行ってもいいと思ったのは本心だ。ただ、あの状況では結月はその条件を呑むほかなかっただろうから、嫌なら嫌で断る選択肢もあることを匂わせて、晃大は再確認を取った。
「肉……奢ってもらったし……。俺、自分の発言には責任を持つタイプの人間だか――」
「出たそれ」
ふっと、晃大は吹き出した。
「いや、いいよ別に。たかが遊びだし。気分がノれば行く、ノらなきゃ行かない。責任とか、まどろっこしいことはなし」
なにより、責任で付き合ってもらったところで、こちらとしても楽しめない。それなら行かないほうがマシだ。
そのとき、そのときでノリが合う相手としか、晃大は付き合いをしない。そうでない付き合いは、お互いにとって時間と労力の無駄にしかならないだからだ。
では、馬鹿話してばかりの連れと過ごす時間や、一夜限りの女の子と過ごす時間にどれほどの価値があるのかと問われれば、それはそれで返答に困るのだが……。
最近、ちょくちょくとこういう思考が脳裏を掠める。しかし、考えていると面倒臭くなって、結局はどうでもいいやという境地に至る。
「……」
結月はフォークにトマトを突き刺したまま、しばらく無言で考えている。悩むくらいなら行かなくていいよと声をかけたいところだが、それはそれで、責めているような響きになってしまいそうだ。
「そういや、おまえの大学って――」
「行く」
気を利かせて話題を変えようと思ったその瞬間、結月がぽそりと呟いた。
「え?」
「……テニス。次こそは、おまえをコテンパンにする」
「や、無理だろ」
思わず漏れた本心に、「無理って言うな!」と結月が声を上げた。情緒がおかしい。
「無理って言うほうが、無理なんだからな! 俺は、やるって言ったらやる男なんだ!」
いろいろと滅茶苦茶な理論である。が、予想外にやる気満々で返ってきた了承に、晃大は内心ほっとした。
「うっし。んじゃ、負けたら回らない寿司奢りな」
「う……っ、受けて立つ!」
「いや、立つな立つな」
こういうときに限って、お得意の責任感ある対応が発動しないのはなんなんだ。向こうっ気が強いにもほどがある。
「なんかおまえ、ウリ坊みたいだな」
「だ、誰がウリ坊だ!」
「だってウリウリしてんじゃん。猪突猛進、って感じ」
「ウリウリしてない!」
「してるしてる」
笑いながら、晃大は片方の手でスマホを操作して、以前レンタルしたテニスコートのサイトを開く。
「――今週の日曜、十三時から空いてるって。ど? 行けそ?」
尋ねた途端、ふっと結月の表情が強張った。
「あ……そ、その日は……」
「用事? 無理なら、また来週あたりでも」
結月が休みで、晃大もなるべく纏まった時間を取れるのは日曜くらいだ。先週もその日曜に遊んだばかりだし、今週に至っては別の誰かとの先約が入っていたとしても無理はない。結月にも結月の付き合いがある。
「……ごめん。先に、先輩と会う約束しちゃってて」
口にされた単語に、ピクリと指先が揺れた。
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