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二階に着き、一つ部屋を通り過ぎた二〇五号室。備え付けのインターホンを鳴らして間もなく、チャットのほうに『開いてる』という文が送られてくる。息をついてドアノブを捻ると、部屋の中はしんと静まり返っていた。
ここに来るのは、およそ一ヶ月ぶりだろうか。結月と暮らす部屋とは違い、比較的すっきりと片付いたシンプルな部屋。一緒に生活している相手が素朴なタイプだったから、あまり部屋が散らからないのかもしれない。
靴を脱ぎ、部屋の奥へと足を踏み入れるなり、ベッドで手足を丸めて横になるエヴァンの姿が目に入った。
「いきなり呼び出しといて、お出迎えもなしかよ」
冗談っぽくかけた声に、ピクリとなだらかな肩が揺れる。しかし、反応はそれだけだった。
「エヴァンのほうから誘ってくるとか、珍しいじゃん。なんかあったのか?」
ぽすんとベッドに腰掛け、さらさらとしたブラウンの髪を指で梳く。男同士でこんな触れ方ができるのは、エヴァンくらいだ。
「……なにもない。ただ、ヤりたくなっただけ」
「へえ。じゃあ、今日はタダでいいってこと?」
お互いヤりたいときにだけ会ってヤる関係なら、それはセフレだ。それでもホテル代くらいは抱かせてもらう側が支払うものだけれど、幸いここは寮の一室である。
「……一万でいい。それで、俺の気が済むまで抱いて」
「金は取んのかよ」
さすがは商売人。とはいえ、あのエヴァンが一万で、時間も気にせずなんていうのはやはり不自然である。
「嫌ならいい。テキトーに、ほかのやつ呼ぶから」
「ほかって? 剱崎 さんとか?」
剱崎は、この寮に住む大学四年の先輩だ。あまり関わりはないが、エヴァンの一番のお得意さんということで、寮内では広く知れ渡っている。
「……将剛 には、今日は来れないって言われた」
――てことは、すでに俺二番手かよ……。
まあ、そこはどうでもいいのだが。
さておき、これで確信した。もしここで晃大が断れば、エヴァンは言葉通り、また別の誰かに同じような誘いを持ちかける。
外国人の美青年と、一万円でヤりたい放題。どんなおかしな輩に目をつけられるか、わかったものじゃない。
こういう仕事をするうえで、自暴自棄になれば心身ともに破滅するのは一瞬だ。実際にそうなった人間の話を、知り合いづてに幾度か耳にしたことがある。
「――んじゃ、一万で。すぐへばんなよ?」
言いつつも、晃大はそっとエヴァンの肩を押し、シーツの上に仰向けに寝かせた。雪のように白く、滑らかな肌にキスを落としながら、丁寧に衣服を剥いでゆく。
「ん……晃大……」
程度の低い男ほど、セックスを力で相手を蹂躙する行為かなにかと勘違いしている節があるが、晃大はそういう人間のことを心底軽蔑している。相手を満足させるセックスができないということは、すなわち、男としての資質に欠けているということだ。それを受け入れられない男に限って、力ずくでその事実をねじ伏せようとする。極めて質が悪い。
「エヴァン、足開いて」
真っ白なライトが照らす室内。女の子なら明かりを消してと恥じらうところだが、エヴァンはなんの抵抗もなくさっと両の膝を割る。
大きく開いた足のあわいに見えるのは、綺麗に縦のラインに割れた後孔。相当使い込まなければ、こんな形にはならないだろう。
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