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「眠いなら、無理にとは言わないけど。どうせおまえ、一人じゃろくに片付けらんないだろ。――明日は? 土曜だけど、時間ある?」
こうなれば、前もって予定を立てておくほかないだろう。常々その場のノリで生きている晃大としては、今できることは今済ませておくのがベストではあるのだが、この際仕方ない。
「あ、明日は俺、バイトあるから……」
確かに、以前バイトについて話題になった際、土曜は午後二時から六時のシフトだとは言っていたけれど。それくらいなら、片付けをする時間くらい取れないものか。
とはいえ、本人が難しいと主張しているにもかかわらず、あまり細かいことを言うのも憚られる。
「じゃあ、日曜は? ……て、いうか」
ふと、晃大はあることを思い出して言葉を区切った。
「そういや今週、テニス行くみたいな話してたよな。俺、予定入ってないけど、そっちは?」
先週は先輩との先約を理由に断られたが、その分、今週はちゃんと空けておくと言っていたはずだ。そうと言われればこちらも迂闊には予定を入れられず、一応、日曜日は空けておいた。
「日曜、は……」
鈍い返事に、さわりと胸が波立つ。
「先輩が、また会えないか、って……」
「また?」
思わず口をついた怪訝な声に、自分でもあれ? と違和感を覚えた。
責められたと思ったのだろう。きゅっと身を竦めた結月に不安気な瞳を向けられて、すかさず語気を和らげる。
「や、別にいいんだけど。……二週連続で会うとか、すげー急接近だな」
思ったことを口にしただけのつもりが、それでもまだ、どこか責めるような色を帯びてしまうことに内心でうんざりした。とはいえ、数年ぶりに再開して連絡先を交換したばかりの先輩後輩にしては、やや関係が密すぎるというのは事実だろう。
久しぶりに話してみて、よほど意気投合したのか。というより、晃大の目の前で再開したあの時点から、二人の間には妙に含みのある空気が漂っていた。なにか、他人に知られてはならない二人だけの秘め事でもあるかのような……。
「……」
晃大の発言に、結月は黙ったまま言葉を返さなかった。自分一人空回りしているみたいで、体裁が悪い。
「じゃあまあ、テニスはなしってことで。片付けは、時間あるときにちゃんとしろよ。またモノなくして泣くことになっても知らねーぞ」
「べ、別に……泣いたりなんか、しないし」
嘘つけと笑って返しつつも、どこか気分が晴れなかった。
自分と周囲を繋ぐ歯車が少しずつ噛み合わなくなってゆくような、奇妙な落ち着かなさ。目を逸らすように、手に持ったスマホの溜まりに溜まった通知欄を開いた。
返しても返さなくてもどっちでもいいようなメッセージの数々。送り主との関係もまた、切っても、切られてもいい程度の浅いものである。身軽で、気楽な、晃大自身が選んだ生き方。
作業のように指を動かして、返信を打ち込んでゆく。けれどもその心は、どこか違う方を向いて、ぼんやりと立ち止まったままだった。
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